「うわー!やっぱり綺麗ですね」

「そうだねー」


残夏さんとの妖館デート。最後に来たのはあの湖。
夕日に染まった茜色の湖は、あたたかく綺麗で、やっぱり神秘的だった


「菜和ー」

「はーい?」

「手、出して?」


言われた通りに手を出すと、残夏さんは今まで自分の髪を縛っていた髪紐をほどき、私の手首に巻き付けた

ふわりと風に踊る長い赤銅色に目を奪われた。


「ねぇ、菜和」

「…はい」


顔を上げればそこにはいつもの笑顔じゃなくて、真剣な瞳が私を映していた


「ボクはね、菜和のことが好き。大好きなんだ」

「…っ、」


ばくばくと今まで体験したことがないくらいに心臓が激しく動く。

何か言葉を返したいのに言葉が見つからない。

何かが胸を締め付けて苦しくて、勝手に涙が溢れてきた


「だからね、菜和」


優しく、壊れ物を扱うように残夏さんが私を抱き締める


「菜和には幸せになってほしいんだ、いつも笑ってて欲しいんだ」

「っ、残夏さ…」


残夏さんは少しだけ切なそうに微笑みながら、私の口を塞いだ


「さようなら。菜和」


とん、と離されて傾く体。後ろにあるのはあの湖。


「また、いつか…」


茜色だったはずの湖はなぜか、白銀といつも来ていたそこの色と同じ澄んだ青色に変わっていて――…

残夏さんの笑顔を最後に私はそこに飲み込まれていった――



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