どくり、どくり、 緊張なのか楽しみだからなのか… 心臓がいつもより早く脈打つ 落ち着いていられなくて何度も何度も部屋の中をぐるぐると歩き回る 残夏さんが迎えに来てくれるのが何だか待ちきれないような、でもまだ来て欲しくないような、自分でもよくわからないものがぐるぐる回る 「菜和ー、迎えに来たよー☆」 「う、うぁ、はいっ!」 外からの声にびくっと体が震える。ついでに声も裏返ってしまった 扉を開ければ、肩を震わせて笑っている残夏さん 「ぶふっ、菜和カワイイー」 「ひ、ひどい…」 「ごめんねー、じゃあ行こうかー?」 「…、はい」 差し出された手に自分の手を重ねれば残夏さんは満足そうに微笑みながら言った。 「残夏お兄さんとわくわく妖館デートー☆」 「妖館デート、ですか?」 「そうだよー、ボクと妖館のあらゆる場所を歩き回るんだー♪」 「楽しそうですね!」 「でしょー?じゃあ行こうかー」 「はい!」 *** 手を繋いで妖館を歩く、ラウンジに行けばりりちゃんと御狐神さん、野ばらさんに連勝さんがいた。 「あぁ!菜和ちゃん今日も可愛い!スカートから覗くその白くて細い脚!メニアック!!」 「わわわっ」 野ばらさんにぎゅーって抱き締められた。それを残夏さんが笑顔で「ダーメ」って言いながら剥がした 一通り館内を回ったあと、庭に出れば渡狸くんとカルちゃんが日向ぼっこしてた。 「カールちゃんっ!」 名前を呼んで手を振ると、カルちゃんがすごい勢いでよってきて、お菓子を差し出してきた 「…、菜和あーん」 「あーん?」 ぱくりと頬張れば絶妙な甘さが口に広がっていく 「…美味しい?」 「うんっ」 笑顔で頷けばカルちゃんは嬉しそうな顔で微笑んだ カルちゃんたちと別れて、また残夏さんと手を繋ぎながら妖館を歩き回る 残夏さんと色んな話をしながら回る妖館はいつもと同じなのに、少しだけ違って見えた 楽しい時間はあっというまに過ぎてしまう ―そうして気が付けばもう、空は茜色に染まっていた ← |