泣いた。ひたすら泣いた

なんで泣いてるのかがわからないくらいに泣いた

ずっと誰にも気付かれないように隠してきた。我慢してきたこと

なのに彼はどうしてわかってしまうのだろう。

きっと"見える"って言うのもあるのだろうけど、別の何かもあるのだと思う

何を言うこともなくただ、子供をあやすように撫でてくれる残夏さんの手の優しさにまたどうしようもなく涙が溢れた

迷惑をかけないように我慢するのが当たり前だった。我慢するのが無意識になるくらいに

甘えていい、我慢しなくていい。そんなこと言われたことなんて無かった


「もー、菜和可愛いー」

「からかわないで、下さい…!」


泣き顔を見られないように強く残夏さんに抱き着く。

そうすると、残夏さんは決まって「菜和って意外と甘えん坊さんだったりするのー?可愛い〜」とか言ってくる

ちょっと、うざい。だけどそれ以上に安心する。残夏さんの傍は何だか居心地がいいみたい

残夏さんのYシャツの色が変わるくらいに、変わりすぎて元の色がわからなくなるくらいに泣いてから、離れた


「残夏さん、ありがとう」


泣きすぎて腫れぼったくなってしまった目のまま笑うと、残夏さんはいつもの笑顔で言った


「どういたしましてー。困ったときはいつでも皆の残夏お兄さんに相談してねー☆」

「…はい!」

「菜和、泣き疲れちゃっただろうし一緒に寝るー?」


ふわり、と頭を撫でられると緩やかな眠気が襲ってくる。残夏さんの言う通り泣き疲れてしまったようだった

一度眠いと思ってしまったらもうアウト。瞼はどんどん下がってくる


「…そ、ですね、…おやすみなさい…」

「おやすみ、菜和」


残夏さんの優しい微笑みを最後に私は夢の中に落ちていった―

次の日の朝。

目を開けた瞬間残夏さんのドアップが目の前にあって、悲鳴をあげてしまったのは仕方ないことだと思います。



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