『―、――!――』

遠くで、声がする
なんだ焦っているようそんな声

だんだんと近付いてくる声。なんだか前にもこんなことがあったような気がするなぁ、って考えてみる


『―、――、菜和っ!』


大きくなって聞こえた声は私の名前を叫んでいた。

その声に反応するかのように、私は遠くにある光に引き寄せられていく…

そして、あっという間に光に飲み込まれた―


***


「菜和!」


こんなに必死に誰かの名前を叫んだことなんて今までにあっただろうか。

今日は朝から気分が良かった。昨日出ていた熱はしっかりと下がっていたから

それに昨日は菜和に看病と称して甘えさせてもらったからねー

自分で言ったことだけど、菜和はやっぱり薬よりもすごいのかもしれない。ボク限定だけどね

そんな感じで廊下を歩いていた。菜和に会えないかなー、とか思いながら

それはすぐに叶った。すごく良くない形で

ボクが見つけたのは廊下に倒れている菜和だった。

近付いて抱き起こしてみれば体が異常な程に熱い。

息も荒くなっていて、眉根に皺がよりすごく苦しそう。


「菜和、菜和!」


名前を呼んでも反応は返ってこない。意識を失ってるみたいだった

とりあえずその軽すぎる体を抱き抱え、自室に向かう。ボクの部屋の方が菜和の部屋よりに近くにあったから

ベッドに寝かせて苦しくないよう少しだけ服を緩めてあげる。心の中でごめんね、って言いながら

氷枕と冷えたタオルを持ってきて頭の下と額の上に

さっきよりも幾分かは、呼吸が落ち着いてきたものになってきていた

とりあえず、一回息を吐く。

ベッドの縁に腰掛けて、菜和の手をそっと握る

早く目を覚まして…、そう願いながら少しだけ手に力を込めて、小さく菜和の名前を呟いた


「…ん、」


小さな声と共にふるりと揺れる睫毛。


「…菜和?」

「っ、残夏さん…?」


ゆっくりと開かれた菜和の潤んだ瞳には、心配をし過ぎたのかなんなのかで大分情けない顔をした自分がうつっていた



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