きらきら輝く湖。
よく白銀と行っていたあの心安らぐ場所


「行きたいな…」


ぽつりと言葉がこぼれおちた。

妖館のみんなのお陰で毎日が楽しい。

だけど、ずっと一緒にいた白銀がお兄ちゃんが傍にいないのはやっぱり寂しかった


「どこに行きたいの〜?」


いきなり後ろから聞こえてきた声に反射的にびくりと体が震える


「ざ、残夏さん…、」

「ボクが連れていけるところならどこにだって連れていってあげるよ〜」


だからそんな寂しそうな顔しないで、残夏さんは優しく私の頭を撫でた

その手に自分の手を重ねて私は残夏さんを見上げる。

大丈夫です、って皆さんがいるから寂しくありませんって言いたかったから

でも言葉を紡ごうとした私の口は、残夏さんによって止められた


「大丈夫、とか言わないの〜。嘘は吐かなくていいよ。寂しいならそう言って」

「残夏さ、」

「菜和のためにボクは何かをしてあげたいんだから」


ね?もう返せる言葉なんて考え付かない。
この人にはわかってしまうから
"寂しい"自分で気付かないフリをするのも、もう辛かった


「…残夏さん、私行きたいところがあるんです。連れていってもらえますか?」

「もちろん、菜和の頼みならどこにでも連れていってあげるよ〜」


"寂しい"って言えなかった。言っちゃいけなかった
人に甘えることは駄目だと思ってた。
お世話になってるだけで、何も返せないならせめて迷惑だけはかけないようにって、我慢しようって


「ほら、菜和行こー?」

「はい!」


でも貴方は言ってくれた"寂しい"って言っていいって。


「菜和」

「なんですか?」

「菜和がボクに甘えてくれることが最高のお返しだからね〜」

「!」


人差し指を口に当てて微笑む残夏さん。

ちょっぴりお節介な皆のお兄さん。それは残夏さんにぴったりな言葉だと思った


「じゃ、じゃあ残夏さん…」

「なーに?」

「手、繋いでもいいですか…?」

「もちろんだよ〜。はい」


残夏さんの大きな手。
お兄ちゃんのとは違うけど、不思議と心がほっとした



「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -