バレンタイン | ナノ



『相馬さん。お店終わったらちょっと顔貸してください。』


…OH、NOOOOO!!!!!!


なんだこれ、顔貸してって私はどこのあかん人ですか、これ!

ついさっき、相馬さんに言ったこの台詞に私は今、猛烈に後悔している

だってどう考えてもおかしいでしょ!しかもなんでいちいち呼び出しとか面倒臭いことしちゃったんだよ

…まぁ、言っちゃったし仕方無いか。

とりあえず、相馬さんを待とう。

壁に寄りかかって息を吐けば、それは真っ白に変わり消えていく

周りは雪だらけ。白に囲まれてるからなんだかちょっと明るい気がしてくるよね

それ以上に寒いんだけど。あー、相馬さん早く来て


「菜音ちゃん、ごめんね。お待たせ」

「いーえ、大丈夫ですよ。相馬さん」


私の心の声を読んだんじゃないかってくらいに、ちょうど良すぎるタイミングで出てきた相馬さんに内心ものすごくどきっとしました。心臓に悪い方ね。


「どこが大丈夫なのかな?手すごく冷たくなってるんだけど」

「いや、その冷え症なんですよ」


ぎゅっと手を掴んでくる相馬さんの温もりがじんわりと伝わってくる

…すごく、あったかい


「相馬さん」

「なぁに?菜音ちゃん」

「チョコ、いりますか」


意外と大きな相馬さんの手に包まれた自分の手を見つめながら呟くように話す

あー、どうしてだろう。急に恥ずかしくなってきた


「!…チョコ?」

「…はい」


相馬さんの手が驚いたように、ぴくりと動いた。私のとかやっぱいらないよなぁ…

なんかだんだん落ち込んできた。どうしよう

そーっと、相馬さんの顔を見上げるとそこには満面の笑みが広がっていた


「欲しいよ、菜音ちゃんのチョコ、すっごく欲しいよ!!」

「う、え、…は、はい」


きらっきらと輝く相馬さんの笑顔がやけに恐い。ちょ、迫って来ないでぇぇえ!!

するっと相馬さんの手から、自分の手を引き抜いて、鞄の中の箱を取り出す

相馬さんのおかげですっかり手はあたたかくなっていた


「相馬さん、これどうぞ」

「ありがとう、菜音ちゃん」


いつもの爽やか笑顔とは違う、もっと近い笑顔。

その笑顔につられるように私も笑った。

相馬さんにチョコを渡してよかったな、てね


―あったか笑顔とチョコレート

(心もあったかくなりました)

20120213

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