「よし、」
綺麗に包み終わったソレを見て、ふふっと小さく笑いをこぼす
あとはお兄ちゃんが帰ってきたら渡せば完璧
喜んでくれるといいな、お兄ちゃんの笑顔を思い浮かべて、ほんの少しだけ胸の奥がきゅんとした。
毎年、毎年あげているのにいつもどこかで緊張してる。
でも、まるで好きな人にチョコを渡すようなこの感覚がけっこう好きだったりする
「ただいま」
玄関から聞こえたお兄ちゃんの声に私は急いで立ち上がって、お兄ちゃんを出迎えに行った
「おかえり、お兄ちゃん」
「あぁ、ただいま。菜音」
お兄ちゃんから香ってきたチョコの香りに思わず眉間に皺が寄る
お兄ちゃんは確かに綺麗な顔立ちをしてるからモテて仕方ないとは思う。
だけど私以外からチョコ貰ってたらって考えたら、なんだか胸の奥がぎゅっと締め付けられるような感覚がした。…これはキライだ
「菜音、恐い顔してどうしたんだ?」
とんっ、と私の額をつつくお兄ちゃんの指
それに、胸を締め付けていた何かが解れた
「なんでもないよ?」
にこっと笑ってお兄ちゃんの手を握る。
そうすればまた起こるわりと好きな、胸をきゅんっとさせるあの感覚。
「お兄ちゃん、チョコ作ったから一緒に食べよう?」
「あぁ、ありがとう」
お兄ちゃんの手をひいて私の部屋へ。喜んでくれるかな、心臓がばくばくと速く脈を打った
***
「はい、お兄ちゃん」
正面に座るお兄ちゃんに、内心すごくどきどきしながらチョコを渡す
ラッピングも綺麗にできてるし、チョコもちゃんとできた
それなのに、不安がもやもやと浮かんでくる
ラッピングを丁寧に外して、お兄ちゃんはチョコを一つ手に取った
そしてチョコは、お兄ちゃんの口の中へと消えていく
もぐ、とお兄ちゃんの口が動くだけでどんどんとどきどきか激しくなる
「…うん、美味しい」
「本当に?」
「あぁ、すごく美味しいよ」
「よ、よかったぁ…」
ほぅ、と大きく息がもれる。不安が全部無くなって、今度は嬉しさが一気に襲ってくる
「菜音」
「ん?なに」
お兄ちゃんはまた一つ、チョコに手を伸ばしながら微笑んだ
「来年も、楽しみにしてるからな」
「―うん!」
―次も、その次も
(貴方にチョコを捧げます)
20120213