▼やきもち
**部室にお呼びだし赤司視点
「………」
腹が立った。
オレじゃない奴と楽しそうにしている菜乃を見て。
大輝と仲良さそうに戯れている菜乃を見て。
名前を呼んだとき、菜乃が少しひきつった顔になったのを見て。
―菜乃は自覚が足り無さすぎる
菜乃は、オレのものだ。
それなのに菜乃は敦や大輝、涼太とよく仲良さそうに話している。
気に入らない、気にくわない。
菜乃にとってはただ友達と話している程度の感覚なのだろうが、こっちは胸が痛くて仕方がないんだ。
これがちっぽけな独占欲による嫉妬だなんてわかっている。
だけれど嫌なものは嫌だ。
だから、少し教育をしてやろうと思って部室に呼んだ。
それなのに、いざ部室で2人きりなってみれば何とも情けないことになった。
惚れた弱味とでも言うのだろうか。
菜乃の目がただオレだけを映しているのを見た瞬間、なんだかもうそれだけでよくなってしまった
「はぁ……」
無意識にもれたため息。
オレはどうしてこうも菜乃には甘くなってしまうのだろう。
目の前で不安そうにオレを見る菜乃。
(…お前も少しはオレの痛みをわかればいいよ。)
そんな思いで頬を引っ張れば、最初は「痛い」と言っていたが離そうとしないオレに、諦めたのか菜乃はただじっとオレを見つめていた
そのあとは少し予想外だった。
いきなり頬を撫でてくるなんて思わなかったから。触れられただけで馬鹿みたいに高鳴る鼓動。本当に、情けない。そして、理由を聞いたときのあの答え。
『赤司くん、かっこいいなって』
へにゃりと柔らかく笑ったその顔に、自分の顔に熱が集まってくるのがわかった。咄嗟に俯けば覗き込もうとしてくる菜乃。その頭を押さえつけて顔を反らした。
(…あんなの反則だ)
くすくすと聞こえてくる小さな笑い声。笑われているのに不快だと思わないなんて。
あぁ、もう本当に…オレは菜乃が好きでたまらないらしい。
頭を押さえつけていた手を後頭部に回して、もう片方の手は菜乃の背中に回して、思い切り抱き締めた
そして菜乃は驚いて暴れだすのを押さえ込んで、耳に軽く口付けた。
その瞬間菜乃は耳まで一気に真っ赤になった。驚きすぎて回らない口で、菜乃はオレの名前を呼ぶ
『あ、あの…、ああああかし、くん…!?』
「今回は特別に許してあげるよ」
もう一度、今度は額に口付ければ、菜乃はさらに真っ赤になった。
幾分が晴れた心。
愛しくてたまらない菜乃を抱き締めながら「次はないよ」と呟けば、菜乃の真っ赤だった耳が一気に色を無くした。
(やきもち)
20121013
うちの赤司変な子過ぎる。