▼忘れ物




(やばっ…)


机の中をひたすら探す、そして次に鞄の中も探す。だけどお目当てのものは見つからない。これは…、やばい。

この先生は忘れ物するとギャーギャーうるさいのに…。隣をちらっと見れば青峰くんはいつもと変わらず爆睡してる。

本当にアホ峰は…。
私、青峰くんの隣になって一ヶ月以上たってるけど青峰くんがまともに授業受けてるの見たことないんだけど。絶対青峰くんって教科書とか一切持ち帰らないで置き勉してるタイプだよね。

…ん?置き勉…、だと!?

これ、青峰くん教科書持ってんじゃないのかな!わぁ!青峰くんたまには役に立つかも!持ってたら青峰くんの株私の中で急上昇するよ!!


『青峰くん、青峰くん』


先生がこっちを見ていないのを確認して、青峰くんの体をゆっさゆっさ揺する。起きろ!起きて!!

それでもなかなか起きない青峰くんの手を思いっきりつねってやれば、青峰くんはものすごい不機嫌そうなオーラを纏いながらも目を覚ました

よし、いい子!いい子だよ青峰くん!!


「…んぁ゙?んだよ人が気持ちよく寝てんのに…」
『教科書貸して。』
「はぁ?」
『教、科、書、貸、し、て。』
「あー、ちょっと待ってろ」


目覚めたばかりの頭でもなんとか理解してくれた青峰くんは机をごそごそとあさりだす。そして、その机の中から―


「ほらよ」
『ありがとう!』


私の求めていたそれを、出した。

それを受け取って私と青峰くんの机をくっつけて、その真ん中に教科書を開いて置く。


「…なにしてんのお前?」


ものすーごい嫌そうな顔で私を見てくる青峰くんに、私はにっこりと微笑みを返す


『いや、折角起きたんだから青峰くんが授業受けてるとこみたいなーって』
「ふざけんな。お前は俺に死ねっつてんのか」
『はっ?』


不機嫌そうだったはずの青峰くん。だけど今はものすごい量の冷や汗を流している。え、なに、青峰くんって勉強すると死ぬの?


「菜乃、大輝」
『え?』「げっ」


赤司くんの声に青峰くんと二人で振り返ると…赤司くんの後ろになんかいた。大魔王とかなんかそんな感じのが

あ、青峰くんが汗だらだらなのって赤司くんの後ろのやつに野生のカンとかで気付いてたからとか?


「離れろ。特に大輝。命が惜しかったら離れろ。今すぐに、だ」


その言葉の直後青峰くんはすごい勢いで机を私と反対側に動かした。そりゃもう机と壁がぶつかってズガァァァン!と言うくらいに。


『菜乃は今日放課後部室においで』
「…ハイ」


超絶笑顔の赤司くん。
いつしかの惨劇を思い出した。あぁ、この呼び出しは死亡フラグに違いない…


(忘れ物)
20121011



第3回BLove小説・漫画コンテスト結果発表!
テーマ「人外ファンタジー」
- ナノ -