▼食堂




「菜乃、今日は一緒に食堂で昼をとらないか?」


昼休み始まってすぐ。タイミングよくお弁当を持ってきていなかった私は赤司くんの誘いに笑顔で頷いた。


***


『うわ、人いっぱいだね』


周りを見れば人、人、人。
帝光中の生徒数が多いのはわかったいたけれど、一ヵ所に集まるとこうもすごいものなのかと、ひとり納得する。

普段はお弁当、忘れたら購買。の私にとって食堂はちょっと新鮮な場所だ。


「菜乃は何が食べたいんだ?」


隣にいる赤司くんはもうすでに注文するものを決めたらしく、そう問いかけてきた。さすが、食堂なれしているな…!

本音を言うとこんな人だらけで若干酔いかけている+食堂のメニューを全く知らない私にとって、注文を決めるのはなかなか難題かもしれない


『んと、何があるのかな?』
「定食、麺類、丼もの。大抵のものはあるよ」
『そっかー』


メニュー多い!?余計に決められない!メニューは多い方が色んなもの食べられていいかもしれないけど今の私にとってそれは鬼畜なだけだ。もう、こうなったら頭に浮かんだものを頼むか


『赤司くん』
「ん?」
『オムライスとかって、あるかな…?』
「オムライス?あるよ」
『じゃあオムライスにするね!』
「あぁ。わかったよ」


食べるものが決まればこっちのもの!注文して受け取って食べればOK!もうもみくちゃにされない!喜びのあまり拳を握り締めると「オムライスがそんなに好きなのか」と赤司くんに誤解をされて笑われた。…うん、まぁ好きだからいっか。

注文して受け取って、席を探そうときょろりと周りを見回してみる。見事にほとんどの席が埋まってる。…座れない。どうする?


「菜乃、おいで。席はあっちだから」
『へっ?』


まるで当たり前と言うかのように赤司くんは私の手からオムライスの乗ったお盆と取ると、「はぐれないで着いてくるんだよ」と私に自分の制服の裾を掴ませて、まだ生徒がごった返す中へと足を踏み入れた。

するすると進んでいく赤司くんに置いていかれないように必死に着いていく。

人混みの中を歩きながら思う。なにか、可笑しい。こんなに人がいるのに誰ともぶつからない。まるで避けられてるみたいに。

そして、不意に顔を上げて見えた光景に、驚きのあまり声が出なかった。

赤司くんが歩く先、まるで赤司くんの邪魔にならないようにとでも言わんばかりに、列が割れているのだ。赤司くん、強すぎる。


「はい。着いたよ」
『え、あ、うん。ありがとう』


赤司くんからオムライスを受け取って空いている席に座る。空いていた椅子の数は六脚。この数ってもしかして…。普段みんなで使ってるんじゃないの!?

ばっと顔を上げて赤司くんを見れば、赤司くんは優雅に焼き魚定食を食べながら、ふっと笑った


「菜乃と2人で食べたかったから、ここ来ないようにって言っただけだよ」


もしみんながいた方がいいなら俺の膝の上に座らせて食べることになるけど、どうする?その言葉にさぁーっと引いていく血の気と、反対に熱くなる頬。

私は小さく「2人きりのがいいです」っと答えるしかなかった。


(食堂)
20121007

―――――
赤司の暴走感が…
原型をとどめないキャラ崩壊が起きるのも遠くないかもしれない…。



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