▼女の子事情
「赤司くんとどこまでいったの?」
笑顔でそう聞いてきたさっちゃんに、私は飲んでいたミルクティーを吹き出しそうになった。
ごほごほと咳き込みながらも、さっちゃんを見上げればその瞳はこれでもか!ってくらいに輝いている
「土曜日赤司くんに家まで送っていってもらったでしょ?何もないってそんなこと有るわけ無いよね!」
流石恋する乙女のさっちゃんだ。恋愛事にはやっぱり興味が溢れてるんだね。
なんとか咳を止めて、乾いてしまった喉にミルクティーを流し込む
『…夕焼け、一緒に見て送ってもらっただけだよ』
さすがに、キ、キスしたとかは恥ずかしくて言えないからその部分だけを抜いて、帰りにあったことを説明すると、さっちゃんは何だか納得がいかないような渋い表情になった
「…流石の赤司くんでも、大好きな菜乃ちゃん前にしてまだ手を出さないなんてありえる……?」
ぼそぼそと何かを呟きながらさっちゃんは、私をじぃっと見つめてくる。それはもう穴が開いてしまうんじゃないかなってくらいに。…もしかして、気付かれた?
内心ひやひやしながらさっちゃんを見つめ返す。
そのまま暫くさっちゃんと見つめ合っていたら、いきなり視界が真っ暗になった。
「お前らは一体何をしてるんだ」
後ろから聞こえてきたのは赤司くんの声。つまり私の視界を奪っているのは赤司くんの大きな手のひららしい。
「女子と言えど、そんなに俺の菜乃と見つめあってるのはあまり気持ち良いものじゃないんだが」
「ご、ごめんね赤司くん…」
するりと離れた赤司くんの手のひら。明るくなった視界に飛び込んできたのは苦笑いのさっちゃん。
「ただちょーっと、2人にどのくらいの進展があったのかなって気になっちゃって…」
「ほう…」
『!』
小さく声を漏らした赤司くんに冷や汗が流れる。さっちゃん、流石に赤司くんにもそんなことを聞かないで!
「……」
何も言わない赤司くんを内心すさまじい冷や汗と焦りを感じながらも見つめると、赤司くんは私のその視線に気付いたらしく、にっこりと笑って私の肩へと手を回した
そして、悪戯気な笑顔を浮かべて――
「想像に任せるよ」
赤司くんは私の頬に自身の唇を押し当てた。
それに半発狂するさっちゃん。私はもうどうしようなく熱くなった顔を俯かせることしか出来なかった。
(女の子事情)
20121004
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