▼大好きなきみへ




「じゃあ、また月曜日にね!」
『うん、バイバイ!!』


楽しかったパーティーを終えて、みんなに別れを告げる。両手にはみんなからのプレゼント。嬉しくて頬の緩みがおさまらないまま、赤司くんと帰路につく


「菜乃、幸せそうだな」
『うん!今日は今までで一番幸せな誕生日だった』


緑間くんからもらった大きなねこのぬいぐるみを抱き締めれば、あぁやっぱりこれは夢じゃなくて現実なんだなって再確認して嬉しくなる


「菜乃」
『ん?』
「ちょっと、寄り道しないか?」
『いいけど、どこ行くの?』
「ついてからのお楽しみだ」


赤司くんは私の腕からぬいぐるみ以外のプレゼントを取ると、片手でそれを持って空いた方の手で私の手を握った。




***




『うわぁ…、綺麗…』
「帰りに見つけたんだ」


空は夕焼けの茜色に染まり、町の建物はぽつぽつとあかりを灯し始める。茜色に染まっていたはずの空は、いつの間にか押し寄せてきた夜の暗い青色に呑み込まれて、また、景色が変わる

まるで世界が変わる瞬間を目にしたような、そんな気持ちと高揚感が私を包んでいく


「感想は?」


不意に身体を包んだ温もりに、赤司くんに後ろから抱き締められていることがわかる

恥ずかしい、普段ならそう思うのに今は不思議と恥ずかしいとは感じなかった。ただ、目の前の景色に魅了される


『…うまく言えないけど、』
「うん」
『すごく、綺麗だと思う。…世界の色が移り変わる瞬間を見ちゃったみたいな、そんな感じもする』
「そうか…。」


目を反らさずに、真っ直ぐ移り変わる色を目に焼き付ける。二度と同じ色は見られないってそんな気がするから


「菜乃。」
『なに…?』
「誕生日、おめでとう」


突然赤司くんの温もりが離れて、なんだか不安になって慌てて振り返ると、今まで見てきた中で一番優しい微笑みを浮かべながら赤司くんが私を見ていた


『…?』


不意に伸びてきた赤司くんの手。その意図がわからなくて赤司くんを見つめれば赤司くんは私の首元で光るネックレスへと触れた


「菜乃、よく似合ってる」
『赤司くんも、似合ってるよ』


そっと同じように赤司くんの首元で輝くお揃いのネックレスに触れれば、赤司くんは一瞬驚いたように目を見開いたあと、ふっと笑った


「菜乃好きだよ。生まれてきてくれて、俺を好きなってくれてありがとう…」


ネックレスに触れていた赤司くんの手が私の頬を優しく撫でる。それを合図にするように私は静かに目を閉じた―――

夕焼けが夜に呑み込まれるその瞬間に、私たちは初めてキスをした


(大好きな君へ)
20121004


―――
はずかしいもうやだ



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