▼女の子らしさについて




『…ねぇ、青峰くん。メールってやっぱさっちゃんみたいに可愛い方がいいのかな?』
「はっ?」


昨日の夜キャパオーバーになるまで考え込んだ問題について、青峰くんに意見を求めてみれば、青峰くんは「いきなり何言ってんだコイツ」と言いたげな目で私を見てきた


「いきなり何言ってんだお前。」


訂正しよう。言われた。


『女の子っぽいメールの方が嬉しいんじゃないの?』
「…ホントにお前いきなり何言ってんだよ」


今度は心底意味がわからない、そんな目で私を見てくる青峰くんに私は昨日思ったことを一から説明してやったら青峰くんはあろうことか深い深いため息を吐いた


「お前がいきなりさつきみたいなメール送ってきたら気持ちわりィわ」
『なにそれムカつく』


何コイツほんとに。人が悩んでいると言うのに…。ハートだらけの嫌がらせメールでも今夜送ってやろうか。密かにそんなことを考えていたら、青峰くんが「はっ」と嘲笑うような声を漏らした。いや私を見て嘲笑った間違いない。


「その無いに等しいおっぱいかしてお前が女らしくなるのは無理だ」
『…青峰くんサイテー。軽蔑しますわ。お前は全世界の貧乳を馬鹿にした。』
「いやちげぇぞ。俺はお前だけを馬鹿にした」
『…青峰とか、練習量増やされてのたれ死ねばいいのに』


確かにさ、確かにさ、さっちゃんみたいな大きい胸をずっと見てきた青峰くんだからさ、私のは小さく見えるだろうよ?実際大きくないしね?だからってド直球に言わなくてもいいと思うのね、私。

椅子の上で体育座りして、膝に顔を埋める。

なんでだろう。今まで気にしてなかったけど、こんなショックを受けるものだったとは…


『…赤司くんも、そう思ってるのかなぁ………』


あれ、なんでだろう。目から鱗出てきたよ?めっちゃ柔らかいやつ。あれ、なんでだろう。視界がぼやけてるレベルじゃなく見えないんだけど…


「…お、おい?菜乃…、お前もしかして泣いてたりしねぇよな?」
『アホ峰など滅べばいい』


ぎゅうううっと膝を抱え込んで、呟く。アホ峰はなんだか焦ってるみたいだけどそんなの知ったことじゃない。私をネガティブ思考に追いやった罪は思いんだよ。

「げ」


アホ峰がそう声を漏らしたのと同時に、ふわっとあたたかいぬくもりが私の体を包んだ。…これは、もしや


「…大輝、お前菜乃に何をしたんだい?」


俯かせていた顔を上げれば、予想通り赤司くんが私を包み込むようにして抱き締めていた。

すごくその腕の中はあたたかいのに、赤司くんの口からアホ峰に対して発せられる言葉はやけに冷たさと棘を持っていた


「いや、これは…!」


赤司くんの雰囲気に圧されてか、さっきよりも更に慌てて弁解をしようとするアホ峰。助けを求めるように私に視線を寄越してくるけど、そんなの知ったこっちゃない。

ぷいっと視線を反らして、赤司くんの制服を握りしめた。


「大輝に何をされたのか、言ってごらん?」


優しく頭を撫でてくれながら、これまた優しく微笑んでくれる赤司くん。あぁ、なんだかネガティブが少しずつ払拭されていく気がする…!


『…青峰くんから言葉の暴力とセクハラを受けました』
「…へぇ」


赤司くんのその反応で、一瞬で冷える空気。青峰くんが尋常じゃない冷や汗をかいているのが見える


「大輝。お前、今日の練習五倍だ。」
「げ」
「あと、話したいこともあるから練習が終わったら部室に来い」
「…マジかよ」
「俺の菜乃に手を出した罪の重さを教えてやろう」


そうにっこりと微笑んだ赤司くんに、青峰くんだけでなく、私も異常な程の恐怖を抱いたのは当然なのかもしれない。


(女らしさについて)
20120929

――――――――

・・・おまけ

『…赤司くんもやっぱり女らしいメールとか、胸大きい方がいいの?』
「俺はそのままの菜乃の全部好きだからそういうのは無いな」
『…赤司くん!』
「そんなことなんかで悩まなくていいんだよ。菜乃は安心して俺を好きでいればいい」
『……赤司くん、そのセリフ恥ずかしい』
「………」



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