▼きみのこと
『じゃあ、またね』
「あぁ、」
目の前で微笑む菜乃を抱き締めたくなる気持ちを抑え込んで、バスに乗り込む。
俺も、テツヤたちも一緒に乗って帰ろうと言ったけれど菜乃は、『私はバスケ部じゃないから』っと言って断わった。
確かにそうなのだろうけど、菜乃が乗ることに文句をつける奴がいたとしたら、そんな奴俺がどうとでもしてやるのに
せっかく気持ちが通じたのだから、もっと一緒にいたかった
外の立つ菜乃の姿をバスの中からぼんやりと見つめると、その視線に気付いたのか、菜乃は俺の方を見て照れながら微笑んだ
(…可愛い、)
全員が乗り込んだのか、ゆっくりと動き出したバス。
俺達に向かって手を振る菜乃に、小さく手を振り返す。
そして完全に菜乃の姿が見えなくなったあと届いた「お疲れ様」のメールに、また菜乃に会いたくなった。
(きみのこと)
20120919