▼私と赤司くん
試合終了を告げる合図
沸き上がる観客席
それは、圧倒的な勝利だった。
――帝光中は、全国2連覇を鮮やかに決めた
体育館内の熱はまだ冷めることなく、帝光中への歓声が響き渡っている
―その中で、その声は真っ直ぐに私の耳に届いた
「――白月さん!」
その声のする方へ視線を動かすと、笑顔の赤司くんが、私を見ていた
『…赤司くん!』
赤司くんに向かって手を振ると、赤司くんが私の座っている席のすぐ下まで駆け寄って来て、両手を広げた。
…両手を、広げた?
「白月さん、おいで」
素晴らしくにこやかに言う赤司くん。いや、無理です。怖いです。目の前の手摺と言うか壁と言うかを乗り越えて、コートに飛び降りる勇気など、ない。そして私はスカートです。
「なのっちー!」
「なのちーん!」
「菜乃!」
「菜乃ちゃーんっ!」
「白月」
「白月さん」
気付いたら、赤司くん以外の皆も集まって、皆で私の名前を呼ぶ。
「受け止めるから、おいで」
あぁ、もう!
腹をくくります!
一回周りを見回すと、観客たちは帰り始めている。
(…チャンスは今、行く!)
足をかけて、一息に飛び降りた
目指すは赤司くんのもと!
「いい子」
『…すっごい怖かった』
赤司くんは言った通り、ちゃんと私を受け止めてくれた。
…赤司くん、思ったよりずっと逞しいって、私は変態か!
そっと赤司くんから、離れようとすると、何故か逆に赤司くんに抱き締められた。
「白月さん」
『な、ななななに?』
赤司くんのあまりに近さと、耳元で響く声に、心臓は壊れそうなくらいばくばくと脈を打つ。
「――好きだよ」
え、え、え?
目の前で顔を赤くしながら私を真っ直ぐに見つめる赤司くん。
え、赤司くん、今、好きって言った…?
誰を、何を、赤司くん、すき?頭がぐちゃぐちゃになって、なんだか涙が出そうになる
「俺は、菜乃のことが好きだ」
私を落ち着かせるように頭を優しく撫でてくれる赤司くんの温もりに、だんだん、だんだん落ち着いてくる
落ち着いてきた頭でゆっくりと整理する。
そして、やっと、わかった。
昨日のさっちゃんの言葉の意味も、心臓が煩い理由も。簡単なことだった
『あかし、くん…』
「なんだい?」
優しい赤司くんの声に、ゆっくりと息を吐き出して、赤司くんを真っ直ぐに見つめ返す
『私も、好き…です…』
そう私が返事をした瞬間の赤司くんの笑顔は今までで一番嬉しそうで、私も嬉しくて、仕方なくなった
(私と赤司くん)
20120917
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