▼メール
(―おかしい、私は病気かもしれない。)
一心不乱に卵をかき混ぜているだけなのに、唐突にどっきどっきんと心臓が激しく脈打つ。
正しく言うと、何をしていても唐突にどっきどっきんしはじめる。
それに共通点を見つけたのはついさっき。
共通点はちなみに買い出しに行った日の赤司くんの照れたような笑顔を思い出したときだ。
『うう…』
どうした、どうしてしまったんだ。私は…!
赤司くんはかっこいいし、優しいし、頼りになるし、たまに可愛いし、笑顔もすっごく素敵だと思うし、それで、それで……!
『はぁぁぁ…』
どうしたらいいんだろう…。
無意識に携帯に手が伸びて、私は無意識にさっちゃんへと電話をかけていた
何回目かのコールのあと、聞こえてきたさっちゃんの声に、なんだか安心して涙が出そうになった
《もしもし、どうしたの菜乃ちゃん?》
『さっちゃん…』
《えっ、菜乃ちゃんどうしたの!?》
『私、病気かもしれない…』
《詳しく話してみて?》
『うん……』
さっちゃんに心臓がいきなりどっきどっきんしたり、それは赤司くんのことを思い出すときだとか言うことを話した。
話終わると、さっちゃんは嬉しそうに言った
《菜乃ちゃんにも、春が来たのね!》
『…へっ?』
《明日が楽しみになってきた!》
『う…?』
《それば病気だけど、病気じゃないから大丈夫だよ》
『え?』
《じゃあ、また明日ね!》
そのまま切られた電話に私は目を丸くすることしかできなかった。
(病気だけど、病気じゃない…?)
『どういうこと…?』
携帯を見つめながら、さっちゃんの言葉の意味を考えていると、携帯がメールの受信を告げて震えた
さっちゃんからかな?携帯を開くと、赤司くんからのメールだった。
そういえば買い出しの帰りにアドレスと番号交換したんだっけか。
赤司くんのメールに返事をしたあと、携帯を閉じた
…なんだか、明日がすごく楽しみになってきた
《明日、試合のあと観客席で待っていてくれ。話したいことがある》
(メール)
20120917
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