▼肝試し
「肝試ししよう!」
きらっきらとした笑顔でそう言った黄瀬くんに、皆の冷たい視線が突き刺さったのは言うまでもないと思う。
「なぜ今、肝試しをする必要がある。理解できないのだよ」
「疲れてんだから早く寝ようぜ」
だるそうにソファーに倒れ込む青峰くんと、その隣でテーピングの巻き直しをしている緑間くんからは肝試しをやる気が全くないのが伝わってくる
まぁ、確かに昼間あんなに練習したんだから早く寝たいよね。
「えー、折角の合宿なんスからそういうのも楽しまなくちゃ損っすよ!」
ぷくーっと頬を膨らませながら黄瀬くんは、皆のことを見るけれど誰一人として賛同するものはいなかっ…
「いいね肝試し。やろうか」
いた。
「赤司くん、本気ですか」
にこにこ笑顔で黄瀬くんに賛同した赤司くんに、黒子くんがそう問えば、赤司くんは「あぁ」と首を縦に振った
「楽しそうじゃないか、肝試し。勿論皆、やるよな」
お馴染み赤司くんの疑問符の無い聞き方。それに誰も逆らうことなく皆冷や汗を流しながら何度も首を縦に振った
***
「今回の肝試しはペアを組んで合宿の奥にある神社に行って来るだけだ。ルールは簡単。俺に逆らわない。以上」
「「「はい!」」」
懐中電灯片手に微笑む赤司くんに皆は一斉に返事をする。赤司くんすごい
「ペアはさっきくじで決めた通りだ。…最初は、敦と真太郎だね。途中で帰ってきたら練習量増やすから」
「うぇぇ…。」
「早く行って、早く終わらせればいいのだよ」
笑顔の赤司くんから、緑間くんは蝋燭(赤司くん曰く雰囲気出るから)を受け取ると、むーくんを引っ張りながら真っ暗な森の中へと入っていった
「さぁて、次はどこの組が行く?」
くるりと、赤司くんが振り返った瞬間、隣で黄瀬くんが「ひぃっ」と小さく悲鳴を上げた。どうしたモデル(笑)よ。
ちなみに残っているのはあと3組。赤司くんと黒子くん、青峰くんとさっちゃん。そして私と黄瀬くんだ。
『じゃあ、次は私たち行こうか』
はいっと手を挙げて、赤司くんに言えば「じゃあ次は白月さんと涼太ね。」と懐中電灯を渡してくれた。あれ、蝋燭は?…まぁ、いいか。
『黄瀬くん、行くよ?』
いつの間にか石化していた黄瀬くんの服の裾を引っ張ると、みるみる内に黄瀬くんは……
顔を赤らめたあと、真っ青になって倒れた。
『…え?黄瀬くん…?』
「黄瀬くん、気絶してますね。……言い出しっぺなのに」
黒子くんは至って冷静に黄瀬くんの頬をべしべし叩きながら黄瀬くんの様子を呟く
『え、黄瀬くん気絶?』
「じゃあ菜乃、お前1人で行くことになるな」
頑張れよ、と言いながら親指を立ててきた青峰くんの親指を折れない程度にあり得ない方向に曲げてから、懐中電灯を強く、握り直す。
青峰くんはウザかったけど、そうだよね。1人で行くしかないよね
『じゃあ、行ってきます』
覚悟を決めてさぁいざ森の中へ!
「俺も行くよ。テツヤは大輝たちと行ってくれるか」
「わかりました」
『えっ?』
「白月さん、行こうか」
『あ、うん』
うーん、とつまりあれですか。私は1人じゃないと。赤司くんが一緒に来てくれると。うわっ、赤司くん優しい。
『赤司くん、ありがとう』
「いいんだよ。女の子1人でこんな時間に歩かせられるないから」
そこで私は気付いた。ひどく歩きやすいことに。
どうやら赤司くんが私と歩調を合わせてくれながら、障害物がないところに上手く私を誘導してくれているらしい
これは惚れるね。うん
赤司くんについて思ったことをまとめて、1人頷く。
『…赤司くん?』
いきなり歩みを止めた赤司くんに、私も歩みを止める。考え事してたから少し赤司くんより数歩前にいるけれど
『赤司くん、どうしたの?』
俯いて黙ってしまった赤司くんの名を再度呼べば、赤司くんはゆっくりと顔を上げ、まっすぐに私を見た
「――白月さんは、」
両の違う色の目が、静かに私を射ぬく。吸い込まれてしまいそう
いつの間にか目の前まで移動してきた赤司くんの手のひらが、そっと頬に添えられる
どくり、どくり、私のものじゃない、別のものみたいに、心臓が大きく激しく脈を打つ
「―白月さんは、俺に惚れてくれないの…?」
『――!』
至近距離、吐息がかかりそうなほど。どうする、どうしたらいい?
『あ、赤司、くん…?』
何故だか発した声は震えてて、だけど赤司くんは、その声に少し困ったように微笑んだ
「冗談だよ。」
添えられていた手が動いて、私の頬をみょーんと引っ張った
冗談、冗談…?つまり赤司くんは私をからかっていた、と?
なんだ、そっか、そっか……。冗談だと思ったらなんだかほっとした
「テツヤたちが待ってるだろうし、早く行ってしまおう」
『そうだね』
差し出された手を握り返して、赤司くんと2人神社に行って、皆のもとに帰ってきて、もはやお約束と化したむーくんのあっつい抱擁を受け止めた。
(肝試し)
20120914
―――――
赤司の場面書いてたら
恥ずかしくなりました(笑)
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