▼暑い、暑い
「はっ、はぁっ!」
「くっ、…はっ、っ!」
暑い、暑い体育館の中で練習をする皆の体からは練習用のユニホームの色が変わってしまうほどの汗が流れ出していた
タイムや、ドリンク、タオルの準備をしているだけ、もはや立っているだけでも汗が滲むこの気温。疲労はものすごいものだろう
『ねぇねぇ、さっちゃん』
「?どうしたの、菜乃ちゃん」
『ちょっと出掛けてきても、大丈夫かな?』
「んーっと…、」
さっちゃんはきょろりと周りを一回見回した後、「うん、大丈夫」と私に笑いかけた。めっちゃ可愛いです
『じゃあ、ちょっといってきます!』
「いってらっしゃい」
さっちゃんに見送られながら体育館を出て、向かう先はただひとつ。食堂だ。さて、頼んでみようかな
***
「―休憩!」
流れてくる汗を腕で拭いながら、そう言葉を発すると部員たちが動きを止める。そのあとはその場に倒れ込んだり、水分を摂りにいったりと人それぞれだけど
「はい、赤司くん」
「あぁ、ありがとう」
桃井から受け取ったタオルで汗を拭きながら、体育館を見回してみて、気付く。白月さんが、いない
「あれ、白月さんは?」
「菜乃ちゃん?菜乃ちゃんならちょっとお出かけしてる」
お出かけ…?
その言葉の意味がとれずに、いるのが表情に出ていたのか「きっと皆のためになにかしてるんだと思うよ」とフォローを入れられてしまった
皆のため、確かに白月さんはそんな理由でもなければ勝手に体育館から離れるわけがない
そう考えながらドリンクに口をつけたとき、白月さんの声が耳に響いた
『さっちゃん、ただいま』
「おかえり、菜乃ちゃん!」
白月さんは、真っ直ぐに桃井の元に近付くと何かを耳打ちする。そして、2人は顔を見合わせた後微笑んだ。…一体なんなんだ?
なんだか面白くない気持ちが広がって、俺は白月さんに駆け寄ってその腕を掴んだ
「白月さん、何しに行ってたの?」
白月さんは俺の問いかけに、悪戯っ子のように『お昼までのお楽しみ』と微笑んだ。
その直後、体育館に休憩の終わりを告げるアラームが鳴り響いた。
『赤司くん、頑張って』
言葉とともに、軽く背中に触れる指。…仕方ない、か
そして種明かしの昼には、程好く冷えたレモンゼリーが出た。
(暑い、暑い)
20120913
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