▼キセキたちの夜

**合宿編にて



「ねー、皆ってさなのちんのことどう思ってんの?」


全ての始まりは紫原くんのその一言でした。




「はぁーっ、疲れたッスねー!」


昼間のハードな練習を終えて、疲れた体を休めるために僕らは各々の用意された布団へと潜り込んでいく

黄瀬くんのように言葉には出さないものの皆、気持ちは同じようで、ぐてりと体を柔らかな布団へと沈めていた

そんなときでした、紫原くんがその台詞を放ったのは。


「どうしていきなりそんなことを聞くんですか?」


僕が枕に埋めていた顔を上げて、そう紫原くんに問うと「なんとなく気になったから」と何とも言えない答えが返ってきました。

そして紫原くんはその大きな体で寝返りをひとつうつと、再び口を開きました


「俺、なのちん好きだよ。お菓子くれるし、一緒にいるの楽しいし」


それに抱きつくといい匂いする。紫原くんがそう言った瞬間、赤司くんの眉がぴくりと動いたのを僕は見ました。紫原くん終了のお知らせかもしれません。

でも、それに気付いていないのか紫原くんは青峰くんの方に視線を飛ばす。


「峰ちんはなのちんのことどう思ってんのー?」
「はっ!?」


いきなり話をふられて驚いたのか、青峰くんは間抜けな声を上げました


「ねー、どうなの」


じーっと紫原くんに見られ、青峰くんは面倒臭そうに前髪をかきあげながら、少し考えたあと口を開いた


「馬鹿。あとはそうだな、……とりあえず馬鹿。」
「青峰っち、なのっちのことそんな風に思ってたんスか!?」
「しばらく一緒にいると、どうしたってそうとしか思えなくなるぜ?」


青峰くんの言葉に赤司くんの眉がまたぴくりと動いた。青峰くんも終了のお知らせかもしれませんね

青峰くんの言葉に納得が出来なかったらしい黄瀬くんは、勢いよく起き上がるとびしぃぃぃと青峰くんに人差し指を突き付けました


「なのっち優しいじゃないっスか!それに、なのっちといると癒されるって言うか安心するっていうか…。とにかく俺はなのっちのこと大好きっス!」


そう言い切った黄瀬くんに注がれるのは冷たい視線。仕方ないですよね、だって黄瀬くんですし


「黄瀬ちん、キモい」
「黄瀬早く寝ろ」
「ひどいっ……!じゃ、じゃあ、そう言う緑間っちはどうなんスか!?」


皆に冷たい視線で見られ、半泣き状態になった黄瀬くんは、もう完璧寝る準備になった緑間くんを指名しました。

緑間くんはそれに特に反応することもなくただ一言。


「気が利くいい臨時マネージャーだと思うのだよ。」


とだけ言って布団に潜り込んでいきました。


「じゃ、じゃあ黒子っち!」
「え、僕ですか?」


いきなり名前を呼ばれた少し驚きました。白月さんについてですか、うーん、そうですね…


「いいお友達になれたらいいと思ってます。」


人の大勢いるところで僕を見付けてくれた、僕と同じようにバニラシェイクの好きな白月さん。そんな理由でそう思うのは僕だけでしょうか


「テツヤ、お前は本当にいい子だね」
「え?」


何故か満足そうな顔で僕を見つめる赤司くん。死亡フラグは回避できたみたいですね


「赤ちんは、どうなのー?」


もふもふと、枕を弄くりながら紫原くんがそう言えば赤司くんは ふっ と笑って言った。


「さぁな。…とりあえず早く寝ろ。明日は早い」


そして暗くなる室内。早くも寝息が聞こえ始めます。きっと青峰くん辺りだと思いますけど


「ねぇねぇ、黒ちん」
「紫原くんどうかしたんですか?」


紫原くんは隣の僕にも聞こえるか聞こえないかくらいの小さな声で呟いた。


「実際なのちんのこと一番好きなのって赤ちんだよね」


そして僕もまた紫原くんに聞こえるかどうかの声で「そうですね」と呟いた



(キセキたちの夜)
20120912
加筆1027



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