▼バスの中
1週間はあっという間に過ぎて、今日から合宿です。
「白月、3日間よろしく頼むのだよ」
『うん、よろしく緑間くん』
今は合宿を行う場所にいくためにバスに乗ってます。私の隣は緑間くん。
黄瀬くんとむーくんが座席を巡って争って決まらなかったから、青峰くんの発案により座席はくじで決めました。
「白月、これをやる」
『へっ?』
唐突に緑間くんに渡されたのは、何とも可愛らしい猫のぬいぐるみ。…緑間くん、どうしたの…!?
どう反応していいかわからず、とりあえず緑間くんとぬいぐるみを交互に見ていると、緑間くんは顔をかぁっと赤くした
「か、勘違いするな!それは、今日のお前のラッキーアイテムなのだよ!」
『そうなの?』
「そうだ!別にぬいぐるみが好きとかそんなわけではない!」
余程勘違いされるのが嫌だったのか、力説?する緑間くんの言葉に頷いておく。
『なるほど。ありがとう』
緑間くんがぬいぐるみ好きとか云々は置いといて、猫のぬいぐるみは普通に可愛いものだったので、お礼を言う。
「気にするな。お汁粉の借りを返しただけなのだよ…」
眼鏡をくいっと上げて、窓の外へと視線を移してしまった緑間くんにもう一度ありがとう、と言ってからバス全体を見渡してみた。
むーくんは1人で座席を占領してお菓子をもぐもぐしてる。あ、手振ってくれた可愛い。振り返して次へ。
青峰くんはさっちゃんと座っている。幼馴染みの縁とはなかなか強いものなのかな、と。
黒子くんは黄瀬くんと。黄瀬くんが何やら黒子くんに話しかけているけど、黒子くんすっごい面倒くさそうにしてる。黄瀬くん安定可哀想。
あとは赤司くん。
赤司くんは一番後ろに座ってる。ちなみに私と緑間くんの後ろでもある。
体を捻って後ろに振り返ってみれば、赤司くんは本を読んでいた。
酔わないのかちょっと心配になったけど、赤司くんだもんね。酔うわけないか。
「なのちん、一緒にお菓子食べよー」
『うぁっ!?むーくんいつの間に?』
くるりと、後ろを向いていた体を戻すと、目の前にはむーくんのドアップがあった。ふ、普通に驚いた…!
「なのちんが赤ちん見てた間」
『移動早いね』
「そう?そんなことよりなのちん、あーん」
『あーん?』
差し出されたお菓子に反射的に口を開けば、ポッキーが入ってきた。それを食べようとしたとき、むーくんは「ちょっと待って」と私を止めた。
よくわからなかったけど、ポッキーをくわえたまま止まっていると、むーくんは悪戯気に笑いながら私がくわえてるのとは反対側をくわえた
「ポッキーゲームー」
『わぁ』
さくさくとポッキーを食べ始めるむーくんに少しあせる。ポッキーゲームってあれじゃなかったっけ、最後にはちゅーしちゃうんじゃなかったっけ!?
「敦、ふざけるのはそこまでだ」
「『!』」
ドスッ、いきなり鈍い音が響いたかと思うと、むーくんが後頭部を押さえて呻いた。
「白月さん、大丈夫?」
『あ…、うん。ありがとう』
心配そうに私を見る赤司くんのもつ本の角が、きらーんっと光っていた。…あれは、痛いよね
「…全く、先に手を出されたりしたらたまらないよ」
赤司くんは私の頭を一撫でしたあと、むーくんを黙らせた凶器を開いて再び読書を始めた
…赤司くん色々すごい
「なのちーん…」
「敦、自分の席に戻れ」
「…わかった」
なのちん、またね。むーくんはそう呟いてから席に戻っていった。
赤司くんに怒られて凹んでるかな、と思いきや、むーくんはまたもぐもぐとお菓子を食べていた。
うん、心配する必要は無かった。
(バスの中)
20120912
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