置き去りにされた僕は




"近寄らないで下さい"

ナツちゃんのその言葉が頭から離れない。

オレはなにかナツちゃんに嫌がられるようなことしてしまったんだろうか。

『嫌いじゃない』とあの日、ナツちゃんが少し照れながら言った表情はしっかり覚えている筈なのに、今は昨日の拒絶が大きすぎて上手く思い出せない


(……初めて、ちゃんと好きになれた人なのに)


はぁ、と息を吐き出す。

この外見のおかげでたくさん好意を持たれることにはなれた。
だけど、こんな風に誰かに好意を持つなんて初めてで、どうすればいいか、なんてさっぱりわからない


「…本当、情けないっスよねー………」
「そうですね」
「…っ!!?」


ガタンッ、と勢いよく椅子から落ちる。

一人言のつもりだったからまさか返事が来るなんて思ってもみなかった…!

てか、だれっスか!?

ばっ、と勢いよく顔を上げて相手を見るとそこには…黒子っちがいた。


「く、黒子っち!!?」
「黄瀬くんは僕を舐めているんですか?」
「へっ?」


見上げた先の黒子っちは、なんだかすごく怒ってるみたいで、背後に何か真っ黒なものが見えるような気がする

な、なんで黒子っちこんなに怒ってんスか…!?


「ナツをくれ、なんて言ったくせに黄瀬くんはそんな甘い気持ちでナツを貰うつもりでいたんですか」
「ち、違うっス!」
「こんなヘタレな黄瀬くんになんて一生ナツを任せることなんて出来ませんね。任せるつもりなんて無いですけど」
「…え、酷くないっスか!?それ!」


一生任せるつもりなんて無い、なんて脈が無いどころの話じゃないっスか!


「だからさっさと潔くフラれてきてください」
「、!?」


黒子っちのその一言に頭にカッ、と血が上るのを感じた。そして勢いのままに黒子っちの胸ぐらを掴み上げる

なんスか、それ!
潔くフラれて来いって…!
いくらなんでも、言い方ってもんがあるんじゃないっスか…!

ぐっ と拳を握りしめる。
いくら黒子っちの言葉だとしても、許せないことくらいはあるんスから…!


「…僕も赤司くんもそんなに気が長い方ではありません。ナツにもう一度告白したいなら早く行って来てください馬鹿犬」
「っ」


真っ直ぐにオレを見る黒子っちの目に、すっ と頭が冷静になる

力の緩んだ手は振り払われて、後ろに回った黒子っちに どんっ と強く背中を押された。
振り返ればどことなく嫌そうな黒子っちの顔が見えた。

あぁもう、嫌なら背中を押さなきゃいいのに

でも……、


「……行ってくるっスね、ナツちゃんのところに!」
「当たって砕けてきてください。」


ありがとう。


教室から飛び出して、走り出す。

ナツちゃんを探しにいこう。オレの気持ちを全部伝えるために



20121105







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