その姿は私の知っている貴方とは違った
(テツ兄、今日も残って練習してるかな?)
先生に日直だという理由で雑用を押し付けられ、それを全て片付けた頃にはもうだいぶ日が傾いていた。
この時期、この時間。大抵の部活はもうすぐ終了するか、もう終了している。もしかしたらバスケ部ももう終わっているかもしれない。
でもバスケ大好きなテツ兄なら多分まだ残って自主練習をしている可能性が高い。そう思って私は薄暗い校内の中を体育館を目指して走っていた
…ダン、ダン、
体育館に近づくにつれて聞こえてくるバスケットボールの跳ねる音。…やっぱりテツ兄残って練習してたんだ……!
体育館についてそっと扉を開ける。勢いよく開けたりして、集中力を切らさせたりして練習の邪魔をするのは嫌だから。
そして、扉の隙間から中を覗き込むと…
『…!』
私が想像していたのと違う景色が広がっていた。
流れ落ちる汗、激しく揺れる黄色。
練習していたのはテツ兄じゃなくて…―黄瀬さん、だった。
『………。』
真剣な顔をしてバスケをする黄瀬さんの姿は、いつものシャラシャラした軽い感じじゃなくて、テツ兄と何か同じものを感じた
(楽しそう…)
黄瀬さんがダンクを気持ち良く決めたのを見た後、扉を開けたときと同じように静かに閉めた
黄瀬さんのことを少しだけ見直した、夕方の話。
20121005
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