これが一目惚れってやつですか
緑間っち風に言えばそれはきっと運命。
ホントに、ホントに、一目見た瞬間ビビッとこの子はオレの特別になるって感じた。
『テツ兄。お弁当忘れてたよ』
「あ、ありがとうナツ」
休日練習の昼休憩。黒子っちと一緒にご飯を食べようと思って、黒子っちを探していたら体育館の入り口で誰かと話しているところだった
(…めっちゃ、かわいい)
黒子っちと同じ綺麗な水色の髪の毛。小さくて華奢な体。なんだか、ぎゅーってしたくなる、そんな雰囲気
あの子は、誰なんだろう。
知りたい、知りたいとオレの気持ちが膨らんでいく
「あれ、なっちんどしたのー?」
「ナツが来てるのかい?」
「きゃー!ナツちゃん久しぶりー!」
紫原っちのその一言で、皆ばたばたと体育館の入り口の方に集まっていく。ぽつんと残されたオレ。
…あれ?もしかしてこれってオレだけがあの子知らない感じっスか?
皆が集まる入り口へ、オレも一歩遅れて駆けていく。なんだろう、すごく悔しい
「よォ。ナツ」
『青峰さん、頭ぐしゃぐしゃしないでください』
「なっちん相変わらずちっさー」
『紫原さん、持ち上げないでください』
皆で可愛いその子を囲んで、ちょっかいを出す。青峰っちは頭をぐしゃぐしゃ撫でて、紫原っちは彼女の華奢な体を抱え上げて、桃っちは青峰っちによって乱されてしまった彼女の髪を整えて、それを緑間っちと赤司っちと黒子っちは眺めてて…
それを更に眺めるオレが持つ感情は、きっと……
「皆ずるいっス!オレにもその子紹介してよ!!」
思ったよりも発した声は大きく体育館内に響き渡った。そのおかげ(?)で、皆はオレの方に振り向いて、あぁと頷いた
「そういえば黄瀬には紹介していなかったな」
赤司っちの言葉に首を縦にぶんぶん振る。そう!そうなんだ!だから早く紹介してよ!!
「黒子。」
「はい、正直黄瀬くんに紹介するのは嫌ですけど仕方ありませんね」
「黒子っちひどいっスよー!」
本当に、本当に渋々っと言った感じで黒子っちは彼女を皆の輪から出して、オレの前へと誘導する
目の前に立つ彼女はやっぱり小さくて、じぃっとオレを見上げる視線に胸がきゅんっと疼いた
「ボクの妹のナツです。」
「黒子ナツです。」
ぺこりと頭を下げたナツちゃん(早速名前呼んじゃったっス!)に合わせて、オレも名前を名乗って頭を下げる
あぁ、ナツちゃん、ナツちゃん、かぁ……!
何て言うか、今すぐにでも彼女になって欲しいっス。「涼太くん」とか呼ばれたらオレ、もうもう…!
「黒子っち!」
オレからまるでナツちゃんを隠すように立つ、黒子っちの方へいきおいよく体を向ける。善は急げっていうから!オレは言うっスよ!!
「ナツちゃん下さい!」
ばっと頭を下げてそう半ば叫ぶように言った。シーンと静まり返った体育館で、まだ聞きなれない声が冷たく、言った。
『寝言は死んでから言ってください』
「…へっ?」
顔を上げればものすーっごく冷ややかな表情でオレを見るナツちゃんの姿が、あった
「ナツは誰にもあげるつもりはありません」
追撃に黒子っち。
あれ?あれれれ?
『私は、あなたみたいな人好きじゃないです』
ばっさり、それがきっと一番ぴったりな表現。
黄瀬涼太、人生で初めて女の子にフラれました
20120928
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