Happy Birthday
『今日は早めに帰ってきてね』
そんなことを朝、言われたのを唐突に思い出した
いつもなら、何も言わないのにどうしたって言うんだろう。
「すんません、トムさん」
「あー、いっーていっーて。早く名前ちゃんとこに行ってやんな」
今日は早めに上がっても大丈夫か、と聞くと、トムさんは笑って了承してくれた
むしろ、言っていた時間よりも早く上がらせてくれた。
最後に言われた「若いモンどうし楽しくやってこい」の意味はよく分からなかった。
「…はぁ、」
今日はなんだか可笑しな日だな、と煙草をくわえながら思う
名前もトムさんもやたらと楽しそうに笑っていた
「わかんねぇ…」
なんとなくもやもやとした気持ちを煙草に押し付けた。灰皿には無惨な煙草だけが残った
***
―ピンポーン、ピンポーン
「……」
言われた通りに早く帰って来たのに、部屋のインターホンを押しても誰も出てこない
くそっ、名前の奴何やってんだよ!
部屋の中からは物音一つしない。
早く帰ってこい、って言った張本人がいないってどういうことなんだあ゙ぁ゙?
だんだんとイラついてくる。名前の奴どっか行ってんのかよ?
なんとなく、ドアノブを回してみたらそれはなんの抵抗もなく簡単に回り、そのままドアが開いた
…不用心すぎんだろ
部屋の中はまだ明るいというのに真っ暗で、自然と不安になってくる
もしかして、俺がいない間に名前が…!?
「っ、名前!」
居間へのドアを思い切り開けた時だった
―パンパンパンッ
「…は?」
目の前には舞い散る彩り取りの紙吹雪と笑顔の名前。
…いったいどうなってやがんだ?
いきなりのことに固まる俺に、名前は嬉しそうに言葉を放った
「HappyBirthday!静雄!!」
…そういうことか。
そういえば今日は俺の誕生日。
今になって、トムさんと名前の可笑しな様子の意味がわかった。
「ありがとよ、名前」
祝ってくれる愛する奴がいる俺は幸せ者だ。
―Happy Birthday
(誕生日おめでとう!)
遅れたけど、シズちゃん誕生日おめでとう!
神谷さんもおめでとう!
20120131
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