例えこの目が見えずとも
「名前、今日はね空が青くてとても綺麗なんだ〜」
彼は私の手をとって、外まで連れ出してくれる唯一の人。
「そうみたいだね。風もすごく気持ちいい」
この手を空に伸ばしたらきっと雲が掴めそうな錯覚を覚えてしまうような、青い空が広がっているんだろう。
「名前、」
「ん、なに?」
残夏の声が少しだけ震えてた。だけど気付かないフリをする
気付いてたって私には何も出来ないのだから。…出来たとしてもそれは残夏を悲しませること
「名前、ごめんね…」
ぎゅっと残夏の手に力がこもる。同時にぎゅっと私の手に走る締め付けられる痛み。
「何が、ごめん、なの?私は残夏に謝られること何て無いのに…?」
誤魔化すように、何も知らないように笑う
「名前の目が、見えなくなったのはボクのせいだから…!」
「残夏のせいじゃないよ。ただ私の運が悪かっただけ」
何も見えないのに、見えているかのように私は遠くに向かって手を伸ばす。
その手ごと包み込まれるように、私は残夏に抱き締められた
「…、名前」
「なぁに、残夏?」
ふふふ、笑う私の声は意図も簡単に草原の風に掻き消された
例えこの目が見えずとも
(貴方が目になってくれるから)
◎JUKE BOX.
なんだろう、これ。
20120226
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