そんな夜には




真っ暗な部屋の中、寝ようとする私の耳に響いてくる、ぴちゃ、ぴちゃと言う水音。それは廊下を私の部屋に向かって近づいてきている

これはきっと悪い夢だ…!布団を頭から被り直して、ぎゅっときつく目を瞑る


―ぴちゃ、ぴちゃ…


不意に止まった水音。

ほっ、と息を吐こうとした、だけれどそれは吐き出されることなく止まった

なぜなら、カチャリと音をたてて部屋の扉が開いたから


「―!」


再び響くあの足音。

それは間違いなく私のいるベッドの方へと近付いてきている

足音は、私のベッドの横で止まった


「…、やだ…っ!」


こんな夢、早く終わって…!

その次の瞬間、ばっと強い力に引かれて布団が奪われた


「い、や…?」


布団が無くなり開けた視界の中にうつったのは、可愛らしく揺れる兎耳


「あ、名字〜、びっくりしちゃった〜?」


へらへらと悪びれる様子もなく笑う夏目さん


「…何やってるんですか」


今までの恐怖なんて嘘みたいに、どうしようもない脱力感が私を襲う


「名字、寝る前に怖いテレビ見てたでしょ〜?だから怖くて眠れなくなってるんじゃないかなって思って」


なんならボクと一緒に寝よっか〜?なんて言う兎耳男に私は枕を思い切り投げつけた


そんな夜には

(そんなことが起こります)

20120225

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