無意識に恋




がたがた、とクラスの全員が机を持って動き出す。

私も手に持ったくじと黒板の表を見て動き出す

私の新しい席は窓側の一番後ろ


「ふぅ、」


移動し終えて隣の人を見てみれば、それは学校中で人気の高い櫂トシキだった。

どこか遠くを見ている彼。
とりあえず挨拶だけはしておかなくては、一ヶ月間は隣同士なのだから


「私、名字名前。よろしく」


出来るだけの笑顔を向けて櫂くんに話しかける。ぎこちない笑顔になってなければいいのだけれど


「…あぁ、よろしく」


櫂くんは目を一回大きく見開いた後、短く言葉を返してくれた

どうやら挨拶は成功したようだった


***


私は隣になって初めて「櫂トシキ」、その人がとても優しいことを知った

彼は、私が困っているときにいつもさっと現れて私を助けていなくなる

まるでヒーローのように。

それからだ、助けてもらう回数が増えていくにつれて、私は櫂くんと話をすることが出来なくなっていった。

それがいつも助けられてばかりだと言う申し訳無さから来てるのかなんなのかはわからないのだけれど

櫂くんの目が見れない、櫂くんを見ると頭が真っ白になる

どうしたらいいか、なんてわからなかった




それはとある日の昼休みのこと。

もう、櫂くんとまともに話ができなくなっていた


「おい、名字」

「は、はい」

「ちょっと来い」


私に返事をする暇など与えないで、櫂くんは私の手を掴みどこかへと歩き出した

捕まれた手がおかしいくらいに熱い

そうして連れてこられたのは、屋上。

もう昼休みもおわりだから、私と櫂くん以外に誰もいない

捕まれていた手が離され、櫂くんと向かい合う。

櫂くんを正面から見るのが久しぶりな気がした。


「名前、」

「は、い」


櫂くんに名前を呼ばれた、それだけなのに心臓がばくばくする。おかしいくらいに


「俺、名前が好きだ」

「…えっ、」


―櫂くんが、私のこと好き?

その言葉の意味を理解した瞬間、顔に一気に熱が集まってきた。大袈裟に言うなら爆発しそうなくらいに


「だから、その…」


ちらっ、と櫂くんの顔を見てみると、櫂くんの顔も真っ赤になっていて

なんだか不思議と笑いがこぼれた


「あはは、はは!」

「な、なに笑ってるんだ」


なんだ、なんだ簡単なことだったんだ

助けてもらう度に、櫂くんの優しさに触れる度に櫂くんに惹かれていっていただけ

話ができなくなったのも、恥ずかしかっただけだったんだ


「私も櫂くんのこと好きだよ」


私は真っ赤な櫂くんに向かって笑った


―無意識に恋

(気付いたら君が好き)


櫂くんが誰状態。

20120122

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