風に揺れて
深い深い森の中に小さな湖が一つある
そこはとても美しくて儚い場所――
「名前、いるか?」
「ここにいるよ」
学校が終わってすぐにおれはこの場所へとやって来る。
それは、そう。
木の枝に座りながらこちらを見下ろしている妖の名前に会うためだ
彼女は妖たちの中では珍しく、友人帳に興味を持たない奴だ
友人帳にも名前は載っていないらしい
「また来たの、夏目」
「駄目だったか?」
「いんや、駄目ではないさ」
とすっ、と軽い音を立てておれの隣に降り立つ名前
長い髪がふわりと、舞い上がった
「夏目は変な奴だねぇ。普通の奴はこんなところになんか来ないのに」
くつくつ、と可笑しそうに笑う名前
その横顔が綺麗、だった
「変なんかじゃないさ。こんなに綺麗なんだ。何度だって来たくなる」
「そうかい。ありがとう」
かすかに喜びを顔に滲ませながら笑う名前。
それに俺も笑い返す
…あぁ、明日またここに来てしまいそうだ。
風に揺れる君に会いに―
―風に揺れて
(彼女は今まで一番綺麗な妖)
よくわからない話になった
20120125
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