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それはいつの頃の話だったのだろうか。
お兄ちゃんがいきなり、何もないところを指差して叫んだり
私の手をとって逃げるように走り回ったりしはじめたのは。
そのたびに私は聞いた。
「お兄ちゃん、どうしたの」と。
お兄ちゃんは答えた。
「変な奴がついてくるんだ。」と
皆には見えない何かが見えてしまうお兄ちゃん。
いつしかお兄ちゃんは"嘘つき"と呼ばれるようになっていた
でも、お兄ちゃんは嘘をつく人なんかじゃない。
だから私はお兄ちゃんを信じた
自分を見えない何かから守ってくれる優しい人を信じた。
そして私が五歳の誕生日を迎えたあの日。
私にも見えるようになった
お兄ちゃんに見えていた
モノが
初めて見た
ソレは言った
「お前も見えるようになってしまったのか……」と。
ソレは複雑そうに顔を歪めたが、私は喜びでいっぱいだった
これでお兄ちゃんと同じ世界を見れる!と
「ねぇ、貴方の名前を教えて」
これが私と白銀の出会いだった。
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