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「…んっ、…?」


くらり、軽く目眩のする頭を押さえながら起き上がるとそこは旧校舎の屋上のようだった

あちらこちらには、私と同じことをされたらしい人達が倒れている

そして、ちょうど屋上の中心あたりだろうか、ぼんやりと光を放つ妖がそこに立っていた。


『…目覚めたのか』


私が起きたのに気付いたらしく、妖は顔をこちらに向けて小さく呟いた


「…貴方、悪い妖じゃないんだね」

『…!なに…!?』


ただなんとなく思ったことを口にした瞬間、目の前の妖は目を見開いて驚いた。

そして、苦し気に声を振り絞るようにして、彼は唸る


『…私は不浄だ!不浄な妖なのだ…!!』

「貴方は不浄じゃない。貴方は優しい妖なんだね。ここにいる人だって眠らせているだけ。悪意の欠片も感じられない…」

『うるさい!黙れ!!』


彼の感情が高ぶれば、高ぶるほどに彼の記憶が、感じたことが私の中に流れ込んでくる

それは眩い光のようで、流れ込んでは膨らみ、弾け、記憶を生み出す


「…貴方は、人間が好きだったんでしょう…?」

『!、嫌いだ!私をこんな不浄な姿にした人の子など、我々の住みかを追う人の子など…!』


悲しい、悲しい記憶。
地下に閉じ込められてしまった清い神様の記憶。
一人の少女を助けた記憶…。


「貴方は綺麗だよ…」

『!まだ、言うか忌々しい人の子…!』

「いくらだって言うよ。貴方は優しくて、綺麗だ…」


一気に流れ込んできた"記憶"に私の体は耐えられなかったようで…

私はまた、そこで暗い意識の底に沈んでいった

闇の中、僅かに眩い光が差し込んだとき"時雨"という妖の微笑んだ顔が見えた気がした…

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