旧校舎の怪




「え、肝試し?」

「あぁ、クラスの友達に誘われたんだ」


その日、帰ってきたお兄ちゃんはどこか嬉しそうにそう告げた。

どうしてだろう。お兄ちゃんの考えてることが手に取るようにわかる。

きっと誘われたのが嬉しいんだろうな。お兄ちゃんの笑顔がそれを物語っている

でもちょっと迷ってるのは、ここらへんは妖が友人帳を知っている多いから

…いいこと思い付いちゃった。


「お兄ちゃん、私も一緒に行ってもいいよね」

「…はっ?」


間抜けなお兄ちゃんの顔は面白かった


***


「おーい、夏目ー。いこうぜー」


外から聞こえるお兄ちゃんを呼ぶ声。

それに応えながらお兄ちゃんは少し複雑そうな顔で私を見ていた


「本当に、ついてくるのか?」

「うん、地区の企画なんだから私が行っても大丈夫だよね」


置いてくわけないよね?無言の圧力を笑顔でかけると、お兄ちゃんはため息を一つ吐いて頷いた。私の勝ち。

ありがと、お兄ちゃん。少し悪戯気に笑うと、こつりと頭をつつかれた

着替えてお兄ちゃんと外に出る。そこにはすでにお兄ちゃんの友達の二人が待っていた


「ごめん、待たせた」

「そうだぞー、遅いぞなつ、め…」

「…?」


友達の一人が私を見て言葉を止めた。…え、なに?

茶髪の人はすごい勢いで近付いてきたかと思うと、いきなり私の手を掴んで、きらきらとした笑顔を浮かべた


「おぉ!夏目の妹も来るんだな!!近くで見ると本当に可愛いなー!」

「え、あ…ありがとうございます?」

「おっ!声も可愛い!!いいなー、夏目はこんなに可愛い妹がいて」


へらへらと笑う彼。
明るくて面白そうな人だなって思った


「ありがとう。…だから菜和から手を離してやってくれないか?」

「…お、おう」

「?」


するり、と離れた茶髪の彼。後に知った名前は確か西村さんは、そのときなぜか少しの冷や汗をかいていた


「夏目は妹を大切にしてるんだな。」

「あぁ、すごく大切だよ。菜和は」

「―!」


くすぐったい、でも嬉しい。柔らかなお兄ちゃんの笑顔。大切と言ってもらえた私の存在


「私もお兄ちゃんがすごく大切だよ」


ふふ、と笑えばお兄ちゃんも嬉しそうに目を細めた


「おー、あっつい兄妹愛だこと。見せ付けてくれるね!」

「遅れるから、そろそろ行こうぜ」


こちらも後に名前を知った北本さんの言葉を合図に、私達は裏山の旧校舎を目指して歩き始めた

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