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白銀の見た目とは反して、ふわふわとした手触りの毛をゆっくりと撫でる


「ねぇ、ギン」


返事の代わりにふさっとした柔らかな尻尾が私の頬を緩く撫でた


「ギンは他の人には見えていないの?」

『…さぁな、お前の兄のように見える奴もいるが見えない奴もいるからな』

「そっか、勿体ないな。でも嬉しい」


白銀の太い首に腕を回して思い切り抱き締める

こんなに綺麗で大きな狐を見ることが出来ないなんて、人生損してる

でも、この美しい狐を独り占めしているのはとっても嬉しかった


『だからお前は兄に私のことを黙っているのか?』


白銀は目をすっと細めた。その表情はどこか苛立たしげに見える


「…違うよ」


白銀の首回りの毛に、顔を埋めて小さく反論する

私がお兄ちゃんに白銀のことを黙っているのはそんな理由じゃない


「…お兄ちゃんが、自分を責めないように、だよ」


お兄ちゃんは見えないものが見えることでたくさん傷付いている。

そこで、私が「私もお兄ちゃんと同じものが見えるようなった」っと言ったらどうなるだろうか

わかってくれる人が出来たと安心してくれる?

いや、きっとお兄ちゃんはひどく傷付くだろう

私自身は見えるようになって嬉しいと正直思っている。

でも、お兄ちゃんは自分が何かしらの影響を私に与えたから、私も見えるようになってしまったんだと、考えてしまうかもしれない。

そんなのは嫌だった。

黙っているのも嫌だったけど、それ以上にお兄ちゃんが責任を感じてしまうのも、これが原因で私から離れていってしまうかもしれないことが嫌でたまらなかった


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