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「ただいまー、」
塔子さんと買い物に行って帰ってくると、お兄ちゃんがいなかった
窓は開けっぱなしで、少しだけど室内も荒れていた。
それにかすかにだけど、妖のいた気配がした
「あらまぁ、貴志君たら何処かに出掛けたのかしら?」
私の後ろから家に入ってきた塔子さんは、不思議そうに首を傾げる。
―お兄ちゃんはきっと、塔子さんに迷惑をかけたくない、と思っている、
だから私は笑って言った。
「拾ってきたニャンコと、喧嘩でもしたんじゃないでしょうか」
「まぁ、そうなの!」
あらあら、大変ね。
なんて疑いもせず、夕御飯の準備を始めた塔子さんにほっ、と息を吐いた
***
「た、ただいまー、」
私と塔子さんが夕御飯の準備を始めて少したった頃、お兄ちゃんが帰ってきた
また、ぼろぼろになって
「おかえり、お兄ちゃん。ニャンコさん。山で遊んできたみたいだね?」
「あ、ははは…、そうなんだ…」
私の笑顔に気まずそうに頭をかくお兄ちゃん。
別に私は怒ってるわけじゃないんだけどね
「とりあえず、早く手を洗って来て?塔子さんの美味しいご飯が出来るから」
「あぁ」
脇に友人帳を抱えるお兄ちゃんは、どこか清々しい表情を浮かべていた
そして私の横を通り過ぎていくお兄ちゃんからは、甘いお饅頭の匂いがした
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