ニャンコ先生、登場!




帰ってきたお兄ちゃんは、ぼろぼろだった。

枝にすれたような傷や、泥や砂が身体中についていた

きっと、また妖たちに追いかけ回されたのだろうとすぐに分かった


「おかえり、お兄ちゃん。お疲れ様」


二重の意味を込めた「お疲れ様」でお兄ちゃんを迎えれば、お兄ちゃんは緩く微笑んで「ただいま」と言った。

そしてお兄ちゃんは急いで階段を上がっていった。

小さい声だったけれどお兄ちゃんは"友人帳"と呟いていた。

お兄ちゃんは何かを知ったらしい。


***


「じゃあ、これ貴志君にもっていってもらえるかしら?」

「はい!」


塔子さんからスイカを受け取り、お兄ちゃんの元へと向かうべく階段を上がる

真っ赤なスイカは昼間食べたけれど、とても美味しかった

…思い出すだけで涎が、とはならないけど。


「お兄ちゃーん、スイカ持ってきた、よ…?」

「え、あ、菜和…」


お兄ちゃんは私の姿を見て、気まずそうに笑った

それもそうであろう。

倒れてる狸みたいな生物に、穴の空いた襖。

そしてそれをなんとかしようとあわてふためいている自分

そしてそれを妹に見られると言う、ね…

確かにさっき、ぼすっと何かがぶつかるような音は聞こえたけれど、まさかこれが音の正体だったとは

思ってもみませんでした。逆に思えてたらすごいと思うよ私は


「お兄ちゃん、それ猫?」

「あ、うん…そうなんだ…」


とりあえず、転がっている物体を指差して問えば本当に猫だったらしい

驚きだ。狸にしか見えない

近付いてつんつん、とつついてみる

弾力のある肌が私の指を跳ね返す。…おぉ


「菜和、何やってんだよ…?」

「つついてる」

「ほら、止めなさい」

「癖になりそうな弾力だよ…!」

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