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湖から出る気になれずに、そのままぷかー、と浮いてみる
青い空に流れていく白い雲。青い湖に浮かぶ私。…いいねぇ
そのままぼーっとしていると、どこからか話し声が聞こえてきた
…人間ではなく、妖のだけれど
気まぐれに妖たちの話を聞いてみようと、耳をすませる
『おい、レイコが最近また現れ出したらしいぞ』
『そうなのか、名前を奪われないようにしなくてはな』
『しかし、レイコから友人帳を奪えれば…』
『だがレイコは人の子にしては妖力が強いからなぁ…』
妖たちはそんなことをぼそぼそと話ながら森の奥へと消えていく
"レイコ"
妖たちの話に出てきたその人は、きっとお兄ちゃん並に、いやお兄ちゃん以上に力が強いのかもしれないと、直感的に思った。
***
湖から上がり、白銀にさっきの妖たちの話をしてみると、白銀は「あぁ」と呟いた。
『それは夏目レイコのことだろう』
「夏目、レイコ…?」
やけに馴染みのある名前の響き。
『お前の兄にそっくりな奴さ。見た目も力も、な』
白銀はどこか遠くを見つめながらレイコさんと、レイコさんの持っていた友人帳のことを教えてくれた
夏目レイコ。その名前を何回も何回も復唱する。
お兄ちゃんにそっくりなその人、…あぁ、思い出した
「おばあちゃんのことだ」
『…その通りだ』
ふわっ、と夏の生ぬるい風が頬を撫でた
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