小話集





『ねぇ、幸村』
「なに?」
『帰りたい。眠いんだけど』
「…なに、今更怖じ気づいたの?」
『一週間前からかな』
「約束した日じゃん、それ」
『だからさ、止めよう。心臓によくない』
「おまえの心臓は亀の子束子でできてるから大丈夫だよ」
『大丈夫な気が一切しないよ』
「いいから早く行くよ」
『勢い余って幸村に手、出しても怒らないでね』
「無理かな」
『じゃあ"きゃー幸村くん、こっわーい!"って抱き着く』
「いいよ」
『えー…。やだ』
「なにそれ」
『幸村くんが怖いのに抱きつけるわけないじゃん』
「はっ?」
『よくよく考えてみれば、ホラーなんかよりも幸村のが怖いよね。うん、行こっか』
「…なんかムカつくんだけど」
『幸村〜。ポップコーン食べる?』
「勝手に先行くなよ馬鹿」


2012/08/14 11:33



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