第十九話・賑やかに再集合・


「やほーっ!シュネィヴァ一時間半ぶりぃ!」
「一々報告すんなっての」

自由時間を終えた後、一同は「研究室」に案内された

室内にはシュネィヴァと相変わらずはしゃぐマリカ、何故か青い顔のチィリカにディセンダー四人と若木
それとジェイドに初めて見る顔が三人、いずれも女性


「初めまして私はリフィル・セイジよこれから宜しく」

その中の銀髪の女性が自己紹介をしてくれた
そして何故か反応したのはマリカだった

「セイジ?あなたもしかしてジーニアスのお姉さん?」
「あら?弟に会ったの?」
「うん!」

嬉々としてリフィルに近づくマリカ
どうやら先程の探索時間に出会った者の血縁者だったらしく「もうお友達」オーラでリフィルに話しかけ始めた

「おやおやぁ、これは話が進みやすそうです」

そんな二人を見てジェイドが何故か怪しい微笑を浮かべる
この人得体が知れなさすぎて怖い・・・

「シュネィヴァさーん!」

そんなシュネィヴァの心情も知らず上機嫌で抱きついつてくる若木
何がそんなに嬉しいのかシュネィヴァの胸元に頭を擦り寄せてきた
それがくすぐったくて身をよじる

「お、おい姫祇!くすぐったいから離れろ・・・」
「いやぁー!もっとぎゅーするの!ぎゅー!」
「・・・シュネィヴァと姫祇・・・まるで兄弟のようですね」
「そう言ってないで助けろチィリカ・・・!」

目元を緩ませて二人を見るチィリカに悪態つきながらもシュネィヴァは必死で若木を引き剥がそうとするが若木はその小さな体のどこにあるか知らない馬鹿力(シュネィヴァの腹を絞めない程度)で抵抗した

暫くし離すは無理と悟ったシュネィヴァは仕方なく引き剥がしを断念した
変な脱力感に襲われるシュネィヴァ
それを見てアホ毛ちゃんことキルがくすくすと笑いながら近づいてくる

「ふふふ〜、随分と懐かれたようですね?シュネィヴァさん?」
「別に望んでないけどな」

機嫌の悪さをアピールするように言ってやるとキルは余計楽しそうに口元を緩ませた


「そんなこと言っちゃってぇ!実は姫に抱きつかれて満更でもないんでしょ?このこのー」
「はぁ?だってコイツ今男なんだろ?いいも悪いもねぇじゃねぇか」
「ノンノン!姫は若で有り姫!性別なんて関係ない!見なさいその可愛さ!」
「んんー?」

目をギラギラ輝かせ語るキルに呆れるシュネィヴァ、首を傾げる若木
小さな動きにさえ「可愛いよ!姫!」と騒ぐコイツは重症かもしれない


「でも」

不意に若木を見つめていたキルの視線がシュネィヴァに向けられた
目を細め微笑む少女にシュネィヴァは一瞬息を呑む
形容し難い感情が胸に渦巻いた
そんなシュネィヴァの動揺をよそにキルが顔を近づけてきてゆっくりと唇を動かす


「でもね・・・?
そんな姫と一緒にじゃれあってる君も・・・

ボクは結構可愛いと思うぞ!」


ゾクゥッ!!

背筋を這い上がる悪感
一生の内に言われたくないベスト3に余裕で入るその単語を橙アホ毛は言ってのけてくれた

可愛い

うら若き船長シュネィヴァにとってこれ程屈辱的な言葉はない
普通なら怒鳴り散らして一発喰らわせたい

だがそれは叶わない
何故なら眼前の少女から向けられる眼力がとにかく物凄い

この瞳は常人では持てない
狩る者の瞳
尋常じゃないオーラが滲み出し、命の危険を感じる

シュネィヴァは気づいてないがキルの重圧に腕が無意識に若木を抱き締める
若木の方はどうして今頃が抱き返してくれたのかわからなくて首を傾げていた


絶体絶命危機に、天が助けを与えないわけがない

「コラッ!」
「あいたっ?!」

突如何者かの鉄拳にキルが沈みその隙にシュネィヴァは後ろに飛び退った
無論若木を抱いたまま


キルを叩いたのはお約束のようだがメンバー唯一の常識人テュリ
険しい顔で眼下のキルを睨んでいる


「うえん酷い!テュリが叩いた、レディの頭をたーたーいーたー!」

「僕だって叩きたくないけど君が変なことするから仕方ないでしょ!反省しなさい!」

めっ!とたしなめるテュリから保護者のような、母親のような人格が垣間見える
しっかり者はいいことだとシュネィヴァは心の中で二、三度頷いた



「・・・シュネィヴァ、そろそろ離したら如何ですか・・・?」
「ん?」

先程のやり取りを顔を隠して眺めていた赤い顔のチィリカからの指摘でシュネィヴァは若木を抱き締めていることにやっと気付いた

「お、悪い姫祇、苦しかったか?」
「ううん!」

シュネィヴァの心配に首を振り腕の中の小動物はまた嬉しそうに笑った
つられてシュネィヴァも軽く微笑んで・・・ハッとする

何やってるんだよ自分・・・
今更恥ずかしいことをしていたことに気付きシュネィヴァは慌てて若木から離れる
少しだけ早くなってる鼓動に違和感を覚えつつ目を逸らすとチィリカの視線とぶつかった


「おーい!話始めるってー!」

その直後のマリカの呼ぶ声にシュネィヴァはさっさと終わらせようと、チィリカと共に皆が集まってる場へと足を進めた

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