第十三話・姫君のお怒り・


促されるままに船内へと入ったシュネィヴァとマリカと若干生気のないチィリカは「機関室」とやらに通された
ゴウン、ゴウンと聞きなれない音が辺り一杯に響いていて少し居心地が悪い

中央まで行くと前を歩いていた海賊帽が振り返った


「えーっ、自己紹介が遅れました、ボクの名前はチャット
この「バンエルティア号」の誇り高き船長です」

堂々と胸を張って自己紹介をする海賊帽にシュネィヴァとマリカは顔を見合わせる

「君が・・・船長?」

「はい!海賊アイフリードの遺産!その船をこの直系子孫であるボクが受け継ぎ!船長であることは当然なn」
「私はジェイド・カーティスと申します
以後、お見知りおきを〜」

「って!ジェイドさん!何船長の口上を遮ってんですかぁ!?」

「いやはや〜これは失敬、いち早く自己紹介を済ませようと思った所存でして・・・」


どこから現れたのか眼鏡をかけた男が熱弁しているチャットを遮り自己紹介を行う
勿論船長殿はかんかんだ

「ジェイドさん!今日という今日は許せません!貴方には圧倒的に部下としての意識が」
「さて、御三方に事の顛末をお教えしないといけませんねぇ」
「無視?!船長たるボクをむs」
「信じられないかも知れませんが頭を柔軟にしっかり聞いてくださいね?」

ジェイドは船長をガン無視して話を始めようとする
傍目から見ててもあまりに酷い
こんな部下がいたら・・・絶対に嫌だ
何があっても願い下げだ


じと目で様子を見ていたらふと、背後に人の気配


「あーっ!シュネィヴァさん達いたー!」

振り返る暇もなく、素をさらけ出したらしい子供が背中に抱きついてきた
・・・はて?
こいつはもう少し高い声で喋る気がしたが・・・?


「あぁ、いたいた!ゲストルームで待ってても来ないから帰ったのかと不安になったよ」

ぞろぞろと増える気配にシュネィヴァは気だるそうに体の向きを変える
背中の奴もそのまま体に合わせて動く

入ってきた四人組+αにジェイドが額を押さえる仕草をする

「いやぁー私としたことが、つい自己紹介に躍起になってしまい・・・」

「うぐっ・・・ジェイドさんなんて・・・なんて・・・!」

「あぁ!大佐また船長泣かせたね!!」

嘆く船長を見て橙ことキルが怒りの声をあげる
そのままチャットを抱き締めジェイドに敵意剥き出しで睨みつけた

レクがぽつりと「コイツは毎度毎度・・・」と呟いた
日常茶飯事なのかこのやりとり


「流石姫だね!すぐに皆を見つけちゃった!」



「違うよっ!」



ミナカの褒め言葉に背後にいる姫祇が急に声を荒げた
マリカとチィリカも驚き、目を見開いている
シュネィヴァはゆっくり姫祇の方を見た

頬をぷくりと膨らませて多分怒りを露にしてる年にしては幼い顔
銀髪とチィリカの騒動が起きている間に着替えたのか、普段学校で見るようなスカート姿ではなく簡素なズボンを履いて
いつも小さく揺れていたポニーテールは、どうやったのか、今はうなじに沿うように長い髪は垂れ下がっている

ちょっと違うだけなのに印象がまるっきり変わっていることに驚いた

観察していると顔をあげた姫祇と目が合う
膨れっ面で眼が何かをしきり訴えようとしている

ちょっと間をおいて、ぽかんとしていたミナカが首を傾げる

「うんと?どうしたの姫?私悪いことでも言っちゃったかなぁ?」

「だーかーらーぁ!違うの!ミナカ違うんだよ!」

腕を振ってミナカを怒る姫祇
その姿にどうしても違和感を感じて、我慢できないのかマリカが口を開く

「姫祇?本当にどうしちゃったの??」


すると今度はマリカを睨んでいたたまれない表情になる
今にも癇癪を起こしそうな姫祇に「腕つかんだままはやめてほしいな」と、掴まれているシュネィヴァは疲れた顔をした


「姫?自分の言いたいことはちゃんと言わないと、皆分からなくてびっくりしてるでしょ」

「う〜〜〜〜!テュリま〜で〜!」


保護者ことテュリが叱ると悲しそうな顔になった
そしてシュネィヴァを掴む手にに力を入れて周りの人間にいい放つ





「だからっ・・・!僕は今姫じゃなくて若なんだよっ!!」



- 17 -


[*前] | [次#]





戻る



夢トップに戻る