第十二話・友人の暴走・




「あのっ!大丈夫ですか・・・」

シュネィヴァが甲板に上がるとさっきの銀髪の少年がが真っ先に近寄ってきた

顔は中性・・・というより女性的
男にしては白い肌、翠色の瞳は涙に潤んでいる

一見すれば愛らしい顔立ちに思わず女?と見間違えそうだが


・・・コイツ顔に似合わずでかい
銀髪の視線はシュネィヴァより多少上にある
体つきも細い奴に身長で負け・・・ちょっと凹んだ

それより・・・


「お前がさっきの箱を?」
「ああああの、そのスミマセン!本当にごめんなさい!」
「いや大丈夫だったし、別にもう気にしてないけどさ」
「良かったぁ・・・」
「一つ、聞きたいんだけど・・・」

ほっとした表情の銀髪に静かに問いかける
これはどうしても聞かないといけない話だ
唾を飲んで、声を吐き出す



「さっきの箱はお前が運んでたのか?」


シュネィヴァの質問に少年はきょとんとして首を傾げる
馬鹿な!?今まで見た中でこんなに可愛い仕草はそうそうないぞ!?
人の驚愕を知らずに少年は伏せ目がちにボソボソと喋る

「えっと・・・僕・・・ですけど、その・・・何か?」

「・・・恐ろしいですね」

「???」


いつの間にかチィリカが普段より七割増し真剣な顔で少年に近寄っていた

そのただならぬ視線に少年が一歩後退る
そしてチィリカが何故か一歩詰め寄る
一歩退く、一歩寄る
一歩、また一歩、更に一歩、また・・・


「ってあの、チィリカさん?!どうしたんだ?」

急変したチィリカを制止しようと腕を掴んだ


「・・・シュネィヴァ」
ブルッ
おやっ?何だか悪寒が


「・・・今取り込み中なので・・・邪魔、しないでください」

「は、はい」


素直に頷き手を離す
何故だろう、チィリカが時々分からなくなる

しかし問題は解決してない
見れば少年は今にも泣きそうな顔で必死に「助けて!」と眼で訴えてくる

あぁ、どうしようか


そんな時に天の助けは訪れる


「も〜!二人共何やってるの!!」

先に船内に入っていたマリカがぷんすかと戻ってきた
シュネィヴァは直ぐマリカに走り寄りその肩を力一杯掴む


「マリカ!俺は今までお前を空気の読まん頭が弱いと罵ってたが今撤回する!」
「ひょ?どったの急に??てか酷くない?わたしそんな風に思われてたの?ねぇねぇ」
「頼む!お前にしか出来ない重要任務なんだ!力を貸してくれ!」
「困り事?わたしにしか?」
「承諾か?」
「よっし!引き受けた!」
「よくぞ言った!!さぁ!あの暴走チィリカを止めるんだ!」
「あいあいさー!じゃなくって、いっきまーす!」


何かコントみたいな会話を繰り広げた後、マリカが二人の間に勢いよく突っ込む

シュネィヴァは見守った
内心どう止めるか気になってるのは言うまでもない


「チィリカー!!」
「・・・マリカ、邪魔をするなら容赦しない・・・」
「むっ!そんなことでこの人を巻き込んでいいのかな?」
「えっ?!僕もっ?!?!」
「・・・大丈夫・・・彼には質問したいことが山ほどあるから・・・死なせはしない・・・」
「死!?僕何されるの?!!助けて神様、アスラ様!!」
「ふっふふ、そんなこと言っちゃっていいのかな〜?」


ピタリと両者の動きが止まり互いをじっと見据える


「・・・マリカ、何を・・・?」

困惑混じりの声
マリカが不適な笑みを浮かべる


「さぁっ!この前にひれ伏すがいいっ!!」

バッ!!

自信満々にマリカが取り出したもの・・・
それは・・・!



「・・・・・・猫?」

モサモサな毛、尖った耳、マリカの手から垂れ下る長い尻尾

どうやらぬいぐるみの猫らしいが何の効果が・・・


「・・・・・・いや」

「ぅえ?」

吃驚して思わず間抜けな声が漏れた
見ればチィリカは顔面蒼白でぶるぶると震えている


「チィリカ・・・?」
「イヤアアアァーッ!!やめて!見たくないですよぅ!!」


チィリカは突然泣き出し、ガタガタと怯え始めた


呆然とするシュネィヴァにマリカがふふーんと誇らしげに笑う

「チィリカはね?大切なお魚を食べちゃう猫が大の苦手なの!わたしの勝利!大勝利っ!!」

マリカが大喜びで跳ね回る
シュネィヴァはチィリカを多少不憫に思いつつ依頼達成の労いとしてマリカの頭を二、三度叩いてやった

一方少年は恐怖に腰を抜かしていた
目が合うとふにゅとした顔になる

・・・性別を激しく間違えてる気がしてならない


「コホンッ!」

背後からのわざとらしい咳払いにシュネィヴァとマリカは振り返る

そこには体に不釣り合いな海賊帽を被った子供がいた
不機嫌そうに二人を睨む


「そろそろ説明を始めたいのですが?」

「「あ」」


当初の目的を思い出して二人は同時に声を漏らした



- 16 -


[*前] | [次#]





戻る



夢トップに戻る