第十一話・招かれた異様船・


見慣れた港
いつもと違う停船場にソレはでん!と佇んでいた


「さ、着いたよ」

先導者が振り返りこちらに笑いかけてくる
しかし三人はその場で唯呆然と立ち尽くしていた

目の前に在るものを上手く受け入れられない

それを知ってか知らずか蒼のテュリが喋り出す

「ビックリしちゃったかな?まぁ初めての人はそうなっちゃうかもね
コレが僕等の船だよ」

「コレが・・・?」

「うん」

「「「船・・・??」」」

シュネィヴァ・マリカ・チィリカの声が綺麗に重なる

今目の前にある「船」は自分達の知っている「船」とあまりにもかけ離れ過ぎていた・・・




時は遡り
姫祇一行について来て欲しいと言われた後、三人は簡単な後片付けを始めた

まずは校庭の隅に転がる無惨な弁当箱
中身は魔物に食べられたらしく
マリカが「わたしのお昼・・・!」と嘆いていた

その後教室の様子を見に行く
幸が狼狽えながらもそこにいたので気絶したマギリを彼に頼んだ

そして一応生徒だから教師に連絡を・・・と思ったら姫祇が話をつけていた
何故か四人組に内緒で

そして合流した時テュリに
「駄目でしょ姫!ちゃんと誰かに言わなきゃ!」
とお叱りを受けた

小学生とその保護者がいるような気分になった



そして姫祇一行に案内されて現在に至る

シュネィヴァはまじまじとその「船」を観察した


まず従来の船に比べソレはなんとも形容しがたい形をしていた
鍵型?なんていうか船首?は細く胴も長く
船尾?部分だけ太くなっていた

そして驚くべきはマスト・舵類いが一切見当たらない
甲板はかろうじてあるようだがこれを「船」と呼ぶには多少・・・いや、かなり抵抗があった


「コレが本当に船なの?」

「うん!まぁこの世界じゃ見かけない形だからね」

「・・・この・・・世界?」

「まぁ中で説明するよ」


どうぞと言って多分乗り口であろう場所へ先導される

渋々ながらとついていく・・・途中で

「うわっ?!」
ドガッ!!

「――っ!?!?」

悲鳴と一緒にシュネィヴァの隣に何かが落ちてきた
声にならぬ悲鳴をあげシュネィヴァはおそるおそる落ちてきたモノを凝視する

それは箱のようだった、それもかなり重そうな


「ごっごごごご、ごめんなさい!ごめんなさい!ごめんなさい!」

叫びにも似た謝罪の言葉が頭上から降ってきて顔を上げる

そこには甲板であろう場所から顔を出している人間が一人
但し顔は逆光で見えない
わかったのは太陽を反射するくらい眩しい銀髪の持ち主ということだけ

改めて箱に視線を戻す

銀髪が落としたであろう箱はよく見ると少し地面にのめり込んでいた
あまり高さのない場所から落ちてこの威力
タイミングによってはコレが自分に・・・と考えると鳥肌が全身を駆け巡り冷や汗が出てきた


「大丈夫?シュネィヴァ顔真っ青だよ」
「その、怪我はない?」

マリカとテュリが近寄ってくる
恐怖に固まったシュネィヴァは首を縦に動かすのが精一杯だった


「ごめんなさい!ごめんなさい!怪我してないよね?!今すぐ取りに行くから!」

「あー、怪我ないみたいだから大丈夫だよー!僕が運んどくー!」

未だ慌てる銀髪にテュリが返事をする
そして

「よっと」
ヒョイッ

「え゛・・・!?」

あの重そうな
簡単に殺人が可能な重量の箱を

テュリはいとも容易く持ち上げてしまった


更に信じられないのは

「あーいいなー!私も持ちたかったよぅ!」

「ごめんねミナカ、今日は僕が運ぶよ」

ミナカが箱を運べなくて残念がっていること

しかも「今日は」
ということはしょっちゅうこんなブツを持ち上げてるのかコイツ等!?


「化け物だ・・・」
「すごいすごーい!!」
「・・・人間の・・・限界はどこまでなんでしょうか?」


青くなるシュネィヴァとチィリカ、対し無邪気に喜ぶマリカ


そんな三人を他所に姫祇と仲間達は何食わぬ顔で甲板(?)に上がっていくのだった



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