第九話・危機と平和は隣り合わせ・




ピチョン


水の音、額に伝わる冷たい感触、夢現をさ迷う精神が現実へと引き戻される


「う・・・ん・・・・・・っ!!」

ガバッ!!

「ひゃわっ!?」

跳ね起きたシュネィヴァが真っ先に聞いたのは小さな悲鳴
見ればチィリカが両手をあげ何か言いたげにこちらを凝視している


「あ、悪い
驚かしたか・・・?」

「・・・い、いいえ・・・目覚めて何よりです」
「そうか、良かった・・・・・・目覚めて?」

「・・・はい、そうです・・・シュネィヴァはずっと・・・気絶してたんですよ?」


チィリカの途切れ途切れな説明に今まで抜けてたものが急速に戻ってきた

「俺は・・・気絶して?あ、あの魔物は!?姫祇は!皆はどうなった・・・」


「いよぅ、元気そうだね」


そんな声と共にチィリカの背後から現れたのは見知った顔だった
もっとも、知っている奴はもっと小さい


「・・・紅い生意気な小人?」

「小人じゃねぇよ!あと生意気とは失敬な、俺にはレクって名前があんだぞ」

覚えとけと指差してきてからレクはチィリカの横に座る
目線が丁度同じ高さになった


「んで?体の痛みはどうよ?治ってる?」

「えっ?」

言われてから自分の体を仰視した
腹や腕に包帯が巻かれて、着ていた筈の服は脇に丁寧に折り畳まれていた

そういえば蟹の化け物に横殴りにされて地面に体をあちこちぶつけたんだった

腹を擦ってみる
ピリッと痛みが一瞬体を走り抜けるがそれ以上の痛みはどこにもない


「・・・気になるほどでもない、かな?」

「お〜良かった良かったちゃんと効いて
治癒術で一応治してやったよ、ちょいと手伝ってもらったけどさ」

そう言ってレクは隣にいるチィリカを見る
チィリカは俯いて「・・・出来ることをしただけです・・・」と呟いた


「ま、元気なら上等上等!それに越したことはねぇ」

よっこらせとレクが立ち上がる
じいちゃんかよ


「おいっ!『じいちゃんか』っていうツッコミは無しだぞ!」

「なっ・・・!読まれ・・・って、思ってねぇよ!」

レクはフンと鼻息一つ鳴らして「おーい」と声を上げる
すると遠くから何かが聞こえてきた


ダダダダダダッ!


「ん?何の音だ?」

「・・・あ」

小さな声を一つ漏らしチィリカがサッとシュネィヴァから遠退く

お陰で音の正体を確認することができた
素早い身のこなしで足を動かし、そいつは徐々に近付いてくる

目は真っ直ぐコチラを見ていて、表情は見るからに嬉しそうで、泣きそうな顔で、走ってくるのは気の合う親友

奴はひたすら足を動かし、腕を伸ばして、一直線にこちらへ・・・

「って?!ちょっ止まっ「シュネィヴァーーーーっ!!!!」ぐほあぁっ!!」


ごろごろごろっ

二人の体は揉みくちゃのまま数メートル転がる
痛みが全身に振り返してきてかなり痛い

そんな惨劇があったに関わらず奴の両腕はしっかりと俺の腰に回されていて
親友の野郎だって多少は痛みがある筈なのにお構いなしと言わんばかりに、マリカは全身を擦り寄せてきた


「うわぁっ!シュネィヴァ!シュネィヴァ!生きてる、息して、動いてる!わたしは嬉しい、楽しい!素晴らしい!」

「ぐ・・・ぅ・・・」


マリカの言動にツッコもうにも痛みが激しい

結局俺は諦め半分で掌をマリカの背中に当てぽんぽんと軽く叩いてやる
そして暫くはされるがままになっていた


「やっべぇなぁ、アレが直球愛?ストレート?美しいねー」
「・・・凄い///」


黙れ友人と紅い小人



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