イライラ抑制方法
「ねぇルカー、イライラするのを抑える時ってどうしたらいいかしら？」
宿のソファーでゆっくり座っていたらいきなりずんずんと歩み寄ってきて、超至近距離に来たと思ったらイリアは開口一番にそう言った
「え・・・えぇっと・・・」
それに対し僕の返答は情けない口を濁した呻き
直感がこう告げてきた
“下手なことを言ってしまえば自分に何らかの被害がくる！”と
悲しいかな散々苛め倒されている果てに自然と身に付いた危険予知能力
まぁ身に付いたからといって一割も役に立たない代物だったりするけど
それはさておきイリアの質問を何とかしなければ
言い出しから察するにどうも彼女はイライラしているらしい
そういえば心なしか眉間に皺が入っている
とはいえその表情は不機嫌そうなだけで苦痛の色は見られないから最近彼女を悩ませている偏頭痛が原因ではないようだ
痛みが彼女を襲っていないことにちょっと安心・・・・・・って、そうじゃない！安心してる場合じゃない！問題は質問！
イライラを抑える方法？
よくある答え:体を動かしたり、自分の好きなことに没頭する
体を動かす、なんてアンジュとは違いイリアは毎日活発に動く方だからいまいち効果はなさそう
かといって好きなことをしたら？とか言ったら例のアレが始まってしまう気がする、ぶるぶる・・・
あー、うーと言葉にならぬ呻き声を漏らして頭を捻るルカ
しかしその様子にイリアのこめかみがピクピクと痙攣を始める、簡単に言えば苛立ってる
「何かないの？ル・カ・ち・ゃ・ま！」
「えぇと、その・・・」
ごめんという言葉を何とか喉の奥で止め考える
その内にイリアが急かすように顔をずいずい近づけてきた
さっさと言えよと促す行動はしかし、ルカを色んな意味で追い詰める
近すぎる紅色に意識がとびかけた、その時
ピーン！
「あ！あの、カルシウムを摂ると良いって読んだことあるよ！」
口早で半ば叫ぶようにして言った
「カル、シウム？」
怪訝そうな彼女
「う、うんうん！そのミルクとかに含まれるものでイラつきを抑制するとか、書いてあったような・・・」
ふぅん、と一応答えを聞けたから満足したらしいイリアの体がルカから離れる
ルカは気づかれないようホッと息をついた
「ミルク・・・かぁ、飲むの面倒だなぁー・・・」
質問の次は面倒事にうーむと悩みだす
まあ確かに飲み物となると量摂りづらい面もあるし、大体イリアがミルクを飲んでいる姿を見たことがない
「えっと・・・じゃあ別のものは？例えば、チーズとか・・・」
言っておいてすぐ懐かしさに襲われた
思い出すのは母さんのチーズスープ
あ、久しぶりに食べたいなんて考えたら少し、
とルカが考えてる間にイリアはチーズという単語から連想できる食べ物をあげてみていた
ふと、急にその顔に企むような笑みが浮かぶ
彼女の視線の先の少年はそれに気づかない
「・・・で？ルカ、チーズが何？」
「え？・・・あぁ、えと・・・そのちょっと思い・・・・・・イリア？」
やっと少女の変化に気づいたルカは直感で何かを感じ取った
あれ？まさか・・・？
「ねぇぇルカちゃまぁ？今何考えてましたのぉ？」
「うぇ？えとえと・・・さ、些細なことで」
「誤魔化したって無駄よ！あんたの考えなんて全部お見通しなんだから！」
ビシッと人差し指を突きつけられた
ああ、これはもう何がきても受け入れなきゃいけないパターンだ
やっぱりただの直感って当てにならない
「・・・あの、イリア・・・何が言いたいの？」
おそるおそる伺うとイリアはさも嬉しそうに笑う
何をされるかわかったもんじゃないのにそれを可愛いと思ってしまうのは僕が変だから？
そんなルカに投げかけられたのはやっぱり突拍子もないことだった
「難しいことじゃないわ、ルカ！あんたが今頭に思い描いたものをこれから作りなさい！あたしのために！」
「ええぇぇえっ？！」
素頓狂な声をあげてルカは目を見開く
それすらも楽しそうにイリアは眺めるている
「なぁに〜？ルカはあたしのために何か作ってあげようって気持ちになれないわけ〜」
「そ、そんなことな・・・」
「よしじゃあ決定！さぁさっさと作りなさい！」
ぐいぐいと引っ張られ仕方なく立ち上がり連れ去られるままになる
はい！きびきび歩く！と言う声に僅かに背筋を伸ばした
あ、でもたまにはいいかな
「ホラ早くなさいルカ！」
「わかったから、あんまり引っ張らないでよ・・・」
にしし、と前を行くイリアが笑う
ああ、君の曇った気持ちが僕なんかで少しでも晴れるなら
こんなことも、たまにはいいかもしれない
その後ルカ作チーズスープがどんな感想を送られたかはまた別の話
＋＋＋＋＋＋
スキットで「(料理は)結構見よう見まねで作れるものだね」ってルカが言ってたからチーズスープもいけると思って
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