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思い出話〜回想〜


「リットー、その光ってるのなんにゃ?」

「んあ?」


人の腰にぶら下がったものを興味津々で指差すケットシーの少女にリグゼートは物いじりしていた手を止めた

日差しを受けて色鮮やかに輝くソレは細かな装飾の美しい小物
初めて見る形状のソレにケットシーは尻尾をブンブンと振り回している


「初めて見る!何?これなぁに??」

「コレな、とある奴から貰ったんだけど・・・う〜んとなぁ・・・」

光るソレを取り出しケットシーの眼前に出す
全体を見せたソレには装飾部分から細長い棒が二本、先端が別方向に曲がって突き出ている
質素さと豪華さを併せ持ったソレを手で遊びリグゼートは頭を捻る


「どしたーリットー?」

「ええっと・・・コレなんて名前だったかなぁと・・・う〜ん・・・」

『確か“かんざし”だよリット』


悩むリグゼートに姿は銃の第三者―ナズが助け船を出す
助けられた方は「そうそう!かんざし」と名前がわかってスッキリしたのか爽やかな笑みを漏らした

「いやー、よく覚えてたなナズ」
『もぉーリットちゃんの忘れん坊』
「ま、お前の取り柄なんてそれだけだし」
『酷い!?誰が毎日毎日銃身のお手入れやら朝の目覚ましやら忘れ物点検やらetc!』
「はいはいそっすね〜
にしても懐かしいな・・・アイツ元気かなぁ」

ぐちゃぐちゃと文句垂れるナズを適当にあしらいリグゼートはかんざしを感慨深そうに見つめた
その様子にケットシーが首を傾げる

「アイツってー?誰ー?」

「ん?あぁ〜変わった奴だったなぁ〜」

『・・・はぁ、本当だよね〜
あれは確か俺とリットが一緒になってすぐの話だよね〜』

「超絶迷惑だったけどな」と呟きリグゼートは思い出すように話し出す

そう、それはまだリグゼートが旅を始めナズと出会ってからまだ月日の浅い日のことだった・・・



ガシャンと言う独特の金属音を立て注意深く辺りを見渡したリグゼートは小さく息を吐き出した

「コイツだけか・・・?」
『じゃな〜い?』

蚊の羽音ほど小さなリグゼートだけに聞こえる声が同意を表す
それを聞いてリグゼートはやっと張り詰めていた警戒を緩めた

気を緩めたリグゼートの足元には小柄な狼の亡骸が転がっている
今さっきこの狼を仕留め、辺りを見渡していたのは仲間がいないか探っていたからだ

もっとも、普段なら不用意に、ましてや狼など殺生する必要性はない
余計な危険に足を突っ込まないのが旅人が長生きできる秘訣であると知っているからだ
しかし、今はそんなことを言ってられる状況ではなかったのだ


「さて」

くるりとリグゼートはその場で回れ右をする
視線を下げた草影の元に踞るようにして震える体が一つ


「仮にも助けてやったんだから話をお聞かせ願おうか?」

リグゼートはゆっくりそれに近づいて首を傾げる
視線の先で踞っていた体はおそるおそる動き出すと潤んだ瞳でリグゼートを見上げた



「ソラミネ」と助けた人間は名乗った
それを聞いたリグゼートは開口一番にこう言い放った

「変わった名前」


ソラミネはその言葉に傷ついたように眉を潜めたため直ぐにリグゼートは謝る
するとソラミネは慌てた謝罪に対して微笑を返してきた
どうやら物腰柔らかな性格らしい、まぁ見た目からしてそれを物語っていたりするのだが

ソラミネは変わった名前に次いで変わった出で立ちをしていた

身に纏う服は体のラインが分かるさらりと流れる丈の長い見たことのないようなドレス
袖も長く、二の腕部分はぴったりとしたもので肘から下は逆にふんわりとして袖口がとても大きい
肌は白く、明るい色の長髪は光輝いている
髪と同じく色の薄い大きな瞳が整った目鼻と伴って顔をより一層際立たせている

心の中でリグゼートは感嘆の声をあげた

『ものすっっごく・・・美人です・・・』

さっきの微笑とかマジ威力パネェー、いやー世の中神に愛された人間って本当にいるんだなー、などと感想を並べていると腰に携帯された銃ことナズが微かに動く
『話を進めろ』との催促により現実に戻ってきたリグゼートはソラミネを真っ正面から見据えた
ソラミネも視線を投げ返してくる


「ええと、ソラミネ・・・とりあえず先程までに至った過程を聞きた・・・」



++++++
切りが微妙ですみません
一応続きます

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