ライン

恋せよ乙女2


「ピーチッパイ〜♪ピーチッパイ♪」
「はぁ楽しみにするミナカもかぁわいい!ハァハァ」
「あのね・・・」

期待を込めて歌い出すミナカにキルが興奮しテュリが何度目かの呆れ声を出す
ティスはピーチパイを食べたことがないのでどんなものかと首を傾げるがロキまでそわそわしてるのを見てとりあえず美味なのだと予想した

暫くすると甘い香りが辺りに漂い
間もなく笑顔のクレアが大きな皿を運んできた

「はいっお待たせ、ピーチパイをどうぞ〜」
「わーい!ピーチパ〜イ♪」

ミナカが早々と一つ頬張る、「んふ〜♪」といかにも幸せそうな姿は誰が見ても愛らしい

「じゃあ僕も貰うね?いただきますクレア」
「えぇ遠慮しないで食べて」
「あうん!ミナカちゃんまるで天使・・・!」
「姉様はいつでも天使だぞアホ毛、お前の分は俺が頂く」
「にゃにおぅ!させるかっ!!」
「・・・美味しい」

キルとレクが半ば戦闘体勢に入る中ピーチパイを味わうテュリ、ロキさえ夢中でモクモクと食べている
ティスもなんとか一つ手にした
まだ仄かに温かいパイは甘い匂いで鼻腔を刺激する
まずためしに一口
それからは快進撃
みるみる内にピーチパイが口の中に消えていく

『何これ!?最強・爆発的に美味しい!!』

目を輝かせティスはその甘さに感動した
あまりの美味しさに昇天しそうになる


そしてその場は大人しく味わって食べるテュリとロキ以外の全員により小さな戦場と化したのだった・・・



「ごちそうさまでした」

丁寧なテュリの隣でロキとミナカも小さく手を合わせる
その他諸々は骨抜きで倒れていた
ティスも半分放心状態で席に座っている
天国って・・・意外と近いんですねお母様・・・などと頭の中では意味不明なことを言って
すると

「おい」

隣で声がした
顔を動かすとレクが何か言いたげにこちらを見ていた

「何?」
「そこ、そこ」

レクはこちらを指差したり自分の口元を指して何かを伝えようとするが放心ティスは頭にクエスチョンマークを浮かべるだけ

「何?何が言いたいのよ?ワケわかんない!」
「あぁもう」

ティスの態度にしょうがないと言いたげにレクは立ち上りティスに向かって手を伸ばした
驚いて避けようとするより早くレクはティスの口元から何かをとる

「ホレ、ついてたぞ」
「・・・へ?」

呆気にとられるティスの眼前にはレクの指
その間には多分ピーチパイと思われる欠片があった
どうやらご丁寧にとってくれたらしい

「ぁ、ありが・・・」

咄嗟にお礼を言いかけた、その時だった


ぱくりっ

「!?!?」

食べた
レクがティスの口元についていた欠片を食べた
何の迷いも見せずに
口元の・・・!

頭にカッと熱が集まった瞬間、しかし支配された思考はティスと正反対のものだった


「きゃあああああーーーっ///!!!!」
「「!!?」」

突如上がった悲鳴に全員が驚く
眼前にいたレクも若干びびっていた

「ティ・・・「あわわあわっ、れっれれれれっくさん!なななっなっなななんなんなん!」

顔は真っ赤
口はパクパクと開閉を繰り返す
しかしその瞳に怒りの色はない、むしろ読み取れる感情は

驚愕と羞恥

全員の頭に一つの可能性が浮かぶ
最初にそれを口に出したのはレクだった

「お前・・・フィスか?」

訝しげな顔で少女を見つめるレク
フィスと呼ばれた少女は未だに「あわひやあわ///」と奇声を発している


「フィス?・・・フィス、落ち着いて・・・?」

そこに癒しキャラロキがなだめに入り短い説得でフィスはようやく落ち着いた

「えーコホン!改めて聞くぞ?お前はフィスだな?」
「は・・・はい」

レクの問い掛けに未だ顔が赤いフィスが答える

「でもどうして急に?フィス自身何で元に戻ったか分かる?それにティスは?」
「その、ティスなら大丈夫です、今は体の中で・・・ちょっと怒ってるみたいですけど」
「まぁ・・・怒るだろうね・・・、で?戻れた訳は?」
「それは・・・その、レクさんが・・・ポッ///」


レクが「俺?」と首を傾げる横でフィスは夢見がちに顔を伏せ両手で赤く染まった頬を抑えていた
当人以外は「あぁ」と納得するが約一名、殺気立つ娘がいた

「変態が・・・そうか変態が・・・可愛い可愛いティス、もといフィスちゃんの純情を・・・ね?
貴様っ!!其処に直れ!!ボクが成敗してやる!」
「んあっ?なんだぁって危なっ!!何剣構えてやがる?!」
「問答無用!!!」
「くっそぅこっちが丸腰なのを良いことに・・・ギャアッ!コッチ来んな!!」

バキッ!ドガッ!と騒々しい音を立てて追いかけっこを開始する犬猿組

テュリは後で止めにいかなきゃ・・・と溜め息
ミナカはれっくん大丈夫かなぁと首を捻り
ロキは傍らの半身を黙って見つめていた

フィスは相変わらず夢見心地で頬を染めていた



++++++
後書きスペースがない
長すぎた

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