ライン

初仕事2


「な、何でよろしくされなきゃいけないわけ?それに挨拶なんて頼んでない・・・」
「そうか?でも最低限の礼儀として挨拶しておかないとと思ったんだ」
「あっじゃあ俺も挨拶した方がいいかな?
すごく今さらだけど俺はシング・メテオライト!
よろしくティス!」
「〜〜〜〜!」

左にアスベル、右にシングと両側に笑顔で立つ青少年にティスは気圧され二人を交互に見る
どちらも悪意はない純粋な笑み
対応に困って、ティスは俯いてしまった


「そういえばさぁ、ティスの髪型は自分で変えたの?」
「え?」

そう言ってシングが指すのは二人の最初の話題になったお下げ髪
フィスとは違う綺麗に編み込まれた髪が二つ垂れ下がっている

「そうだな、長いから大変だったんじゃないか?」
「こ、これはロキが編んでくれたのよ!その・・・頼んでみたら」
「へぇ!ロキってそんなことも出来るんだ!」
「器用であることは知ってたがな・・・俺なんかソフィの髪も縛ってやれないよ」
「ロキは何でもできるのよ!普段オロオロしてれから誤解されがちだけど実は凄いんだから!」


嬉々として二人にロキの自慢話をするティスに先程までの警戒心はない
それを見たアスベルは思わずクスリと笑った

「ティスはロキのことが好きなんだな」
「――――ッ///!」

アスベルの言葉に一瞬にしてティスは顔を真っ赤にする
今にも湯気がその顔から立ち上りそうだ


「すすすす好きってああぁあぁあ、当たり前でしょ!!こっこの子にとって家族なんだもの!」
「あはっ!ティス顔が赤いよ」
「うっ煩い!このへっぽこバカぁ!!」


そうは言えど罵倒するティスの表情はどこか和らぎ、嬉しそうにしている
どうやら彼女は少し意地っ張りらしい
だがシングはもうそんな彼女に慣れたのか積極的に話し掛け怒られながらも笑っている
ティスの方も大丈夫そうだ

「さて、そろそろ次に行くか」

アスベルがそう言うと共に、話していた二人は同時に立ち上がった




「さよならだっ!葬刃!」

アスベルによる神速の居合い切りに最後の一体が断末魔を上げ静かになる
辺りを見渡し安全を確認するとアスベルは刀についた血を払い鞘に納めた

「よしっ!これで依頼は完了だねアスベル!」
「あぁ、暗くならない内に引き上げるか」

そう言い合ってアスベルは少し離れた場所にいるティスに歩み寄る
余裕そうな二人に対し彼女は初仕事というのもあって少し辛そうだ
更にここは山である
ただでさえ足場はよくないので手を貸そうと思ったのだ


「平気かティス?このまま下山出来るか?」
「平っ気よ・・・それより・・・」
「?」

心配をはね除けじとっとした目でこちらを睨むティス
アスベルは何か気に障ったかと内心頭を捻ったが、次の瞬間ティスに腕を掴まれ驚いた

「わっ!なんっ・・・」
「動かないで!やりづらいじゃない!」
「え・・・?」

少女が凝視する腕
よく見ると一部服が裂け小さな傷が出来ていた
どうやら先程の先頭でいつの間にかやられていたらしい
ティスはブツブツと小声で詠唱を開始し光の収縮と共にそれを腕に向けて解き放った

「ファーストエイド」

見る間もなく傷は塞がり跡形もなく消え失せた
それを確認するとティスはすぐに腕を離しそっぽを向いた

「自分でも気づかなかったよ、ありがとうティス」

素直にお礼を述べるアスベルに対しティスはそっぽを向いたまま

「べっ別にお礼言われるまでのことじゃないわよ・・・仲間なら」

と傍目からも分かるくらい顔を赤くして言った


「さ、さぁ!とっとと帰りましょう!」
「ティスは優しいんだねっ!」
「ち、違う///」

シングのニコニコ笑顔に堪えられないのかさっさと歩き出すティス
しかし疲れの蓄積で足がふらつき倒れそうになる
が、その心配はなく
気づけばアスベルが体を支えていた

「船につくまで手伝うよ、仲間なんだからな」
「・・・ま、まぁ今日のところは、お願い・・・しようかしら」


素っ気なく言い張るがアスベルの腕をギュッと掴む小さな手はその体を預けてくる
その小さな姿がどこかで守りたい紫の髪の少女と重なって見えて、騎士の青年は目元を緩めた



++++++
ツンデレティスさん
まだ続く←

- 333 -


[*前] | [次#]
ページ:





戻る







ライン
メインに戻る