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降臨2


おっさんことレイヴンが陽気に乱入してきた
シングは普通に彼を話の輪に入れるが少女の方は顔を歪める
しかし彼はお構い無しでトークを開始した

「いや〜乙女っていうのはやっぱり髪型だけで印象が変わっちゃうわね〜!今までも可愛かったけど今はその何倍も可愛いわよ!もうおっさんメロメロ〜」
「・・・あぁそう」
「あらら?随分冷たいわねぇ・・・おっさんしょげちゃう〜」

大袈裟に肩を落とすレイヴン
シングは今のやり取りを見て最初の疑問をさらに大きくした

「ねぇフィス?何か嫌なことでもあったの?」
「嫌な・・・事なんて」

眉尻を下げ顔を逸らす
それがやはりいつもと違うのでシングは更に言葉を続けようとした、が

「本当に寒くなっちゃったわ〜ねぇねぇフィスちゃん〜おっさんを温めて〜」
「・・・っ!」

とオーバーに震えながら手を伸ばすレイヴンに遮られた
近づく手に少女は目を見開き、そして

バチンッ!

それを払った
しかし彼等がもっと驚いたのはその後の言葉だった


「きっ、気安く触ろうとしないでよ!この痴漢オヤジ!!」

「「へ?!」」

二人は同時に驚愕し耳を疑った
少女から、大人しい彼女からそんな言葉が出ると思わなかったからだ
興奮しているのか少女はさらに声を張り上げる

「信じらんない信じらんない信じらんない!汚い手で触ろうとするだなんて!乙女の清純な体を何だと思ってるの?!この最低下劣変態オヤジ!!」
「ぐはっ!!・・・こ、これは流石に堪えるわ・・・」

キツイ言葉攻めにガクッと崩れ落ちるレイヴン
片やシングは暴言を吐きまくる少女に対し目を白黒させていた

「フィ、フィス?!本当にどうしちゃったの??」
「どうしたですって?!あなた目の前で痴漢が行われてても平気な悪漢だったのね!」
「えっ!えぇっ?!?」

顔を真っ赤にして怒り狂う少女にとうとうシングは混乱し出した
そんな時に救いの手は差し伸べられる


「何々?何の騒ぎ?」
「あっコハク・・・」

これだけの騒ぎ気づく人間がいない筈がない
シングは颯爽と現れた女神、コハクを見て情けない声を出した


「ど、どうしたのシング!?何で今にも泣き出しそうなの?」
「フィスが・・・」
「フィス?」

シングは既に男のプライドなけなしで鼻をズルズルとすすっている
涙は今にも決壊しそうだ

「フィスが何か・・・変なんだよぉ・・・」
「変!?変って何よ!失礼しちゃう!!」
「え・・・フィス?」

怒る少女を見てコハクもシング達同様に目を丸くする
が、そこで引き下がるコハクではなく真正面から少女と対峙した

「・・・フィス?喧嘩はダメだよ?」
「喧嘩?悪いのはそっちじゃない!堂々と痴漢してくるだなんて!!」
「ちかっ・・・!」

少女の言葉に一瞬コハクはシングを疑うが傍らにレイヴンを見つけきっと彼のことだと内心ホッとした

「そう、でシングは何かしたの?」
「うっ・・・!」

言葉を詰まらせる少女
シングの方も「俺は何もしてないよ!」と首を振って主張する

「確かに痴漢は悪いことだけど、何で関係のないシングを怒っていたの?」
「そ・・・それは・・・」
「ダメだよ!嫌なことがあったからって人に当たっちゃあ」
「・・・っ」

ね?と説教の仕上げに首を傾げるコハクをシングは尊敬の眼差しで見つめる
しかし少女はそんなコハクに対し、床を睨んで黙っていた


「フィス?今の話分かってくれたよね?」
「わ・・・私は」

少女が口を開き何か訴えようとした時だった


「居たっ!!」
という声と
「おい!ロキ引っ張んなよ!落ちる!」
という声に四人は一斉に上を見上げる
降りてきたのは珍しく息を切らせたロキと彼に引っ張られているスパーダだった
そして二人が降りるや否や少女が素早くロキの背中に隠れる

「「え・・・?」」
「ん?フィスじゃねぇか?お前フィスを探してたのか?」
「えっと・・・」

訝しげな表情でロキを見るスパーダに彼はどう説明しようか悩み顔を伏せる
その様子にシングとコハク(と未だ崩れたままのレイヴン)は顔を見合わせた

「ロキ?何かあったの?」
「え・・・あの・・・」

「し・・・信じらんない信じらんない信じらんない!みんな・・・皆みんな頭がおかしいのよ!」

「はぁ??」

いきなり叫び出した少女に今度はスパーダが目を丸くした
全員の注目を集める中、ロキは小声で少女に二、三言声をかけるとスパーダ達の方へ向き直る


「こりゃどういう事なんだ?ロキ?」
「俺達も知りたいよ」
「ロキ、どういうこと?」


「あの・・・ね、彼女はフィスじゃないんだ・・・この子の名前は・・・ティス
彼女は・・・ラザリスの欠片から生まれた子・・・」

ロキの小さいけれども響く声に一同はティスと呼ばれた少女を見つめ固まった



++++++
ティスさん登場
まだ続く

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