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降臨


それは世界樹に還っていた時―

『ねぇ、ディセンダー』
『?何ですかラザリス?』

樹の中のあやふやな空間、そこに三人はいた
ラザリスの呼びかけに返事をしたのはフィスだがロキも小さく首を傾げ反応する

『キミはボクに生きろと願ったね』
『はい』
『でもボクは暫くココから出ることは出来ない』
『そう・・・ですね』

ラザリスの意識はしっかり樹の中に居座っている
しかしラザリスが実体を持つための力は最後の戦いの際に殆ど失われてしまったのだ
力を蓄えるにも、時間がかかる

『だけどボクはジルディアを受け入れてすぐのルミナシアの民がどう生きているのかに興味がある、だから』
『だから・・・?』


『キミがあそこに戻る時に、ボクの欠片をつれていってくれないかい?』
『欠片・・・ですか?』
『まぁボクの一部といってもいいね
心配しなくとも意識の隅に置いてもらうだけだし、自己主張だって少ない奴だから・・・』
『私は別に構いませんよ?ロキは・・・』
『いや、一人で十分だよ』

そう言ってから小さな光がラザリスからフィスの体へと入ってきた
光は数回明滅を繰り返してから大人しくなる

『フィス・・・?平気?』
『はい、誰かが胸の中にいる・・・みたいな感じですよ
じゃあこの子は責任を持ってつれていきますね!』
『あぁ・・・』

両の拳を固めてやる気を見せるフィスにラザリスは軽く頷き口を緩めた




それがきっと事の始まりだとロキは思う
バンエルティア号に、皆の元へ帰ってきてから数週間後の今日のこと

事は起きた


「・・・これでいい?」
「えぇ、なかなか可愛いわ!やればできるのねロキは」
「む・・・?」

自分達の部屋のすぐ外の廊下にロキと少女はいた
今しがた自分が編んだ二対の髪がいたく気に入ったのか少女がその場でくるりと一回転
上機嫌な緑が満足気に見つめてきた

「それじゃあ・・・皆のところ・・・行こ?」
「えっえ?!それは・・・」
「いや・・・?」

手招きして外へ導くが少女は嫌々と首を降り頑なにそれを拒む
どうしようもなくてロキは一人で廊下を離れる、といっても出入口で静かに様子は伺うが

それでも少女は動こうとはしなかった
暫くドアの外で待ち、もう一度呼び掛けようとした・・・時

「いよっ!何やってんだロキ!」
「(ビクッ!)しゅ・・・しゅパーダ・・・」

背後に背の高い緑色の青年―スパーダが立っていた
そしてその目は何故かニヤニヤと細められている嫌な予感がした


「なぁ〜にをコソコソとやってるんだぁロキ君??」
「う・・・えっと」
「そうかそうか〜ロキもや〜っとそういう事に興味を持ったんだな?関心関心」

何やら激しく誤解されている気がしてロキは必死で首を降る・・・が逆効果でスパーダの顔がどんどん悪い方向に変わっていく

「別に否定しなくたっていいんだぜ〜?男なら誰しも通る道なんだからよ」
「ち、ちが・・・」
「んで?お前は何を覗いてたのかな〜っと」
「あっ!ダメ!」

今までロキがしていたように廊下を覗こうとするスパーダ
必死で止めるが力で敵う筈もなく呆気なくロキはスパーダの行動を許してしまう
・・・が見た瞬間スパーダは肩を落とした

「んだよ、何もねぇじゃねぇか」
「・・・え?」

そんなスパーダの言葉に驚いてロキも急いで廊下を見る
見て、ロキは青ざめた
ソコには何の影も形もない

「・・・!大・・・変!」
「んぁ?どうしたロキ?」
「どこか・・・行っちゃった!しゅパーダ!!」
「うお?!」

急に慌てて急に抱きついてきたロキにスパーダは後退る
しかしロキはそんな彼の態度にお構いなしに珍しく切羽詰まった声で早口に言った

「一人でどこか行っちゃった・・・!お願い!一緒に探して!!」




「あれ?お〜いフィス〜!」

地下三階の船倉
シングは見知った背中に大声で呼びかけた
相手はゆっくりとコチラに振り返り不思議そうな表情する

『アレ・・・?』

知り合いのその反応に違和感を感じシングは首を傾げるがまぁいっかと深く考えず彼女の傍に歩み寄った

「何やってるの?」
「何って・・・別に何も・・・」
「ふ〜ん・・・あぁっ!よく見たらフィス髪型変えたんだ!」
「え?あ・・・コレ?」
「うん!凄く似合ってるよ!」
「ほん・・・と?」
「うん!」

キラキラな眼で正直に感想をのべるシング
必殺・天然タラシ(無自覚)発動
言われた方も誉められたことが嬉しいのか口をゴニョゴニョさせながら頬を染めている
しかしそのまま事が良い方に転がらないのが人生

「ふふふ〜いよっ!少年も言うね〜!」
「?」
「あ、レイヴン!」



++++++
続く

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