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僕の小さな願い事


健やかなる時も病める時も
これを愛し、これを敬い

共に歩むことを誓いますか?




「ねぇ、テュリは何か願いってある」

とある仕事休みの日
カノンノがそう語りかけてきた

「どうしたの、急に?」

「うーん・・・聞いてみたくなっただけ
ねぇ願い事ある?」

「願い・・・かぁ」

唸りながら暫く答えを探す浮かんできたのは


「・・・世界中を見て回ることかな」

ポツリと呟く

「世界中を?」

「うん
僕はさ、このグラニデのディセンダーなわけだけどまだまだ知らないことが多すぎるからさ
だからもっと色んな場所を見て、色んな事が知りたい・・・そう思ってる」

嬉々として自分の願いを話すテュリ
だけどカノンノがこちらを見ているので恥ずかしくなり誤魔化すようにはにかむ

「あ、あんまり夢のような願い事じゃないけど・・・」

「ううん、そんなことない!とっても素敵な願いだと思う
きっと叶えれるよ、貴方なら」

ふわりと笑って自分の願いを肯定してくれる少女
それが嬉しくてテュリもつられるように笑った



「そういえばカノンノの願いは何?」

今度はテュリがカノンノに聞き返した
彼女は恥ずかしがる素振りを見せながら胸の前で手を組み口を開く


「私の・・・願いはね?
・・・いつか、お嫁さんになりたいなぁって・・・
絵本を書くのもだけど、前にパニールがお父さんが私のお嫁入りにくれる予定だったペンダントを渡してくれてね、それをいつも眺めていたの
会ったことも覚えてない・・・お父さんが残してくれたペンダント」


話ながらカノンノはポケットから何かを取り出した
それは彼女が話している父が残してくれたペンダント
瑠璃色の石が彼女の手のひらの上で光輝いている


「コレを見て思うの・・・お父さんはどんな思いで私に渡そうとしてくれたのかなって
私のお嫁入りにだから喜んでかな?それとも寂しそうにかな?考えながら想像するの
このペンダントをつけて真っ白な、純白のドレスに身を包む・・・それが出来たらどんなに素敵なことだろうって」

頬を赤く染めながら語る話を聞きながら彼女がドレスに身につけている姿を頭に思い描く
それはいつか訪れる未来、きっと叶えられると思ったから


「なれるよ、カノンノなら綺麗なお嫁さんに」

そうテュリは言った
だけどカノンノはそれを聞いてむぅと頬を膨らませる
愛らしいが分かりやすい怒りの意思表示に彼は慌てた、怒らせることを言ってしまったのかと
すると小さな声で彼女が呟く


「・・・テュリが叶えてくれないの?」


その言葉の意味を三秒で理解しテュリは顔を真っ赤にした
カノンノの方も言っておきながら恥ずかしそうに俯く


沈黙
互いに流れる恥ずしい空気に不快はなく、どこか穏やかな時間が静かに過ぎていく




「ねぇ、今やってみようか」

「・・・何を?」

「テュリの前でお嫁さんを」

「えぇっ?!」

急な彼女の提案に大袈裟なほど驚くテュリ

「嫌?」

「やっ、そのっ、そんなことは・・・ないけど」

慌てふためくテュリを見てくすりと笑うカノンノ
それが情けなくてテュリはどうしようもない気持ちで一杯だった
そんな彼をまるでからかうようにカノンノは胸の前で手を組む


「健やかなる時も病める時も・・・これを愛し、これを敬い・・・」

誓いの口上をまるでごっこ遊びをするような気軽さで喋り出す
それにテュリは更に慌てるが何もできない


「・・・共に歩むことを誓いますか?」

そうこうしてる内に口上を言い終えたカノンノがちょこんと首を傾げてテュリの顔を覗き込んできた
期待に輝く翠の瞳
近い距離に息を呑んで暫く見つめあう


が不意に

「・・・なんてね!」

とカノンノは言うなり子供のようにペロッと舌を出して早々に顔を離しす
けれど



「・・・誓うよ」


というテュリの言葉に再び視線を戻した


「僕がいつ世界樹に還るかわからないけど・・・それでも誓うよ
その時がくるまでずっとずっと・・・君と一緒にいるって、約束する」


優しさ寂しさを含んだ表情
カノンノはそんなテュリを見て小さく顔を歪めるが、それではいけないとぎこちなく微笑む

「・・・一緒に・・・一緒にいてくれるなら私も誓うよ
貴方が還っても、ずっと貴方を想ってる・・・・・・私はテュリが好きだから」

小さな告白
離れると分かっているからこそ、今を刻み付けるように

「僕も大好きだよカノンノ」


ディセンダーである少年はそっと想い人である少女の額に口づけた




ディセンダーは世界樹が見る自由の夢ならば

どうかずっと、夢のままで覚めないで欲しいと願う



時が二人を別つまで

僕の夢が覚めるまで





++++++
パスカ・カノンノが「お嫁屋さん」になりたいならイアハートでもいけるかなと
誰か僕にもっと甘い作品が書ける才能ください
お願いします

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