ライン

夢見心地


「僕は、イリアが好き?」

「は?」


ある宿屋
くつろいで腰掛けてたベッドの上
珍しく隣にいて珍しく寝転がって布団に顔を突っ込んでいるルカが急に変なことを言った


「だから、僕はイリアが好き?」

「何よそれ、自分の胸に聞きなさいよおたんこルカ」

素っ気なく返事をしたら布団に半分隠れた顔が不機嫌そうに歪んだ
何よ、あたしは何も悪くないじゃない
ムッとしたから睨み付けてやったら女の子みたいに真ん丸な大きい両目が真っ直ぐコチラを見返してきた
なんか・・・

「あんた変」

「そう?」

「ものすっっごく変」

「そうかなぁ」

ハッキリ言ってやったのに傷つく素振りも見せず転がったままルカが近づいてきた

どうしたのコイツ?変なものでも食べたの?
言葉にならない違和感に恐怖を感じてルカが近づいてきた分だけ距離をとる
だけどルカはそれ以上に動いてあたしの片手を捕まえてきた
無論離すよう抵抗したけど相手は毎日大剣をブン回して戦う奴だ
力で敵う筈もなくあたしの片手はルカの手に収まった

ニコニコと何処か心ここに在らず状態であたしの手を両手で抱き締めるかのように握るルカ
端から見れば、いや傍で見ても乙女なその行動
だけど触れあってる手と手がやけに熱くてどうにも突っ込む余裕がない

本当にルカはどうしちゃったの?!

心で悲鳴をあげていたら今度は掴んでる手を顔の近くに持っていき(その際に引っ張られて転けてしまった)なんと頬擦りし始めた

手から伝わるルカの柔らかなほっぺの感触と温度
焦るこっちを尻目に奴は「んー♪」となんとも幸せそうな声を出してまるで甘えるように頬擦りをし続けている

心臓がバクバクと煩い
顔を中心に身体中が熱くなってきて頭が冷静に働かない
何か言おうにも口からは「あう」だの「あの」だの単語にならない声ばかりが出てくる


不意にピタリと頬擦りが止まって、幸せを堪能するように閉じられていた瞳があたしの顔を捉えた
そしてふにゃりと緩む顔

「分かった」

「・・・な、にが?」




「僕はイリアが、好き」

今まで見たことないくらい幸せそうな笑顔で
顔を逸らすことなくそう言われた

あぁきっとこれは夢なんだと自分に言い訳を始め出すと笑顔だった顔が静かに感情を消して、暫くしたら規則正しい寝息が聞こえてきた

言っておいて寝るか普通!?と心の中で悪態づくも彼女の顔は緩んでいた

手は、繋がったままだった




数十分後
目を覚ましたルカは寝る前となんら変わらぬ体勢であったのに「ひゃわっ?!?」と悲鳴上げて跳ね起き素早く逃げていった

それから夕飯時に恥ずかしがるルカを捕まえ逃げた訳を聞くと「何故か寝てて起きたらイリアが目の前にいてビックリしてしまった」かららしい
そして分かったのはルカは自分の問題行動・発言を何一つ覚えてなかったということ
怒りとか悔しさとか苛立ちとかが沸々と腹の中で煮えかえってきて、だけど怒る理由なんて話せる訳ないから
あたしはとりあえずルカのお尻を一発蹴り上げてやった





++++++
こんなルカだったら可愛いななんて思ってこんなん書いた
頭の中だといつもルカは恥ずかしがってるか甘えてるかの二つである僕の脳内

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