学園モノ
「えっと・・・」
とある高校の教室で僕はつい先程配られたクラス名簿に目を落とす
神都紀高校
―平均学力は中の下
部活動も優秀とは言い難く、際立って有名なところがなく完全な名前負けしが逆に珍しい平和な学校
今日はそんな学校の入学式
僕は今年度入学したピカピカ(?)の一年生
新しい教室での僕の席は一番前の窓側から二番目
は目が悪い生徒にはいいかもしれないけど嫌でも教師の視界に入ってしまう最悪の場所だ
そんな席で数ヶ月はすごさなきゃいけない考えると入学したてのドキドキが半減
返せ僕の青春の一ページ・・・!
そんな憂鬱気分で一応クラスメイトの名前を一人でも多く覚えようと名簿を見ている
顔と一致させるのは後でいいだろう
名簿にズラリと並ぶ文字、まず目に入るのは名簿番号6番―僕の名前
とりあえず1番から見ていく
赤石美咲、市田幸田、市ノ瀬結城・・・
ありがちな名前だからすぐ覚えられるかな・・・そう思って視線を進める
上田夏希、荏嶌稀織、榎偵葵救利・・・
「んぅ・・・?」
僕の名前「榎偵葵救利」一つ前の「荏嶌」に目が止まる
なんて読むんだろう?
名簿からして最初の読みは「う、え、お、か」のどれか
・・・最初は「え」かな?
だけどその裏は・・・「嶌」?
分からずにぶつぶつと呟きながら考える
「んー、とり?えとり?えさぎ・・・えかも?」
「えしま」
「えしま?・・・しま・・・えっ?」
突然の割り込みにびっくりして声の方を向くと一人の女子生徒が腰に手を当て、どこか睨むような目付きで僕の隣に立っていた
スラッとした体型
顔は睨んでるけど可愛い部類に入りそうだ
明らかに「モテそうな女子」
「何?人をジロジロと?セクハラで訴えてやろうか?」
「・・・・・・」
前言撤回
「モテそう」じゃない、言葉が悪い、酷い
しかもその「えしま」とやらは嫌そうな顔で「なんだコラ」と言いたげにコチラを見てくる
ムカつく・・・
「なんだよ先に見てきたのはそっちだろ?てかお前こそ何だよ入学早々、喧嘩でも売りに来たのか?」
「私はどう考えても誤解した読み方をしてる頭の悪そうな人に優しく読みを教えただけだけど何?見てた?喧嘩?自惚れも大概にしてよね」
「なんだと・・・!」
「なによ、ムキになって!喧嘩売ってるのはそっちじゃないの!んっと・・・葵!」
「葵救利だ!き・ぐ・り!勝手にはしょんな!」
「グリぃ?どこのネズミよ」
「なんだと!えと・・・きおり!」
「稀織(きしき)よっ!」
「「ぐぬぬぬぬっ」」と互いに唸り、睨みを効かせ合う
初日のハプニングに周りの皆はオロオロするばかり
・・・ただ一人を除いて
「あっはは!初日から賑やかだね荏嶌さん」
「「!?」」
二人揃って同じ場所に顔を向ける
そこにはいつの間に近づいたのか一人の男子が笑顔でこちらを見ていた
「な・・・だ?」
「いやぁ、楽しそうだね
オレの従兄弟の兄さん人見知り凄くてさ、こんな風に直ぐ周りに慣れればいいのにと思ったらついさ」
「「どこが仲良くだっ!!」」
「わぉ、見事に息ピッタリだね!」
柔和そうな顔で無邪気に笑う彼に稀織が真っ赤な顔で歩み寄る
「いい加減にしなさいよっ!誰がこんな・・・冗談もほどほどにして!」
稀織の怒声に怯えを一片も見せず奴は心底驚いた顔になる
「えっ?違うのかい?だって荏嶌さん朝『大丈夫だよね・・・友達できるよね・・・』って繰り返し呟いてたからてっきり・・・」
「なっななな何でそんなことっ?!どうしてっ!?」
「駐車場でどこからか聞こえてきたから」
「最低っ!」
稀織の怒声が悲鳴に変わっている
呟きが本当ならちょっとは可愛いところもあるみたいだ
きっとツンデレなんだろう
「あっそういえば!葵救利君自己紹介がまだでしたね!」
「えっ?あ、あぁ・・・」
いきなり話をふられてびっくりな僕ににっこり笑った彼は勝手に自己紹介を始める
「むらか はかなと言います
ほらここの」
そう言って机の上の名簿を指差す
「斑佳 儚」と言う文字を
「儚いではかな?」
「はい!人の夢で儚です、覚えやすいでしょ?」
「・・・まぁ僕よかは」
葵救利という自分の名前と見比べて苦笑い
字数が少ないのは羨ましいけど・・・覚え方の説明がどこか切ない
まぁいいかと胸の内で納得し儚に手をさしのべる
「じゃあ宜しく、儚・・・でいいか?」
「はいこちらこそ、呼び捨てでOKです葵救利君」
ぽえぽえと笑う儚と握手
初日から友達が出来るなんて幸先がいい
もっとも、
「ほら!荏嶌さんも」
「嫌に決まってるじゃない!誰がそんな奴と!」
ツンデレ娘こと稀織とは当分仲良くできそうにないが
++++++
オチなんてない
元としてもう一つ学園モノ?があるんだけどお披露目は考えてない
あと三人のデザインも考えてない、あいたた
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